中高生には「部活」とは違う選択肢が必要だ② -ドイツ型「市民クラブ」は日本で成立するか-

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■世代を超えて交流するドイツのクラブ
2013年7月13日のフランクフルター・アルゲマイネ紙によると、筆者が暮らすヘッセン州には、住民1000人に対し78ものクラブがある。中学校1年から3年まで、各学年300人ずついたとしたら、70以上の部活の選択肢があるようなものだ。そこから、自分に合ったクラブを探すことができる。年齢で分かれているクラブもあれば、子どもから大人まで一緒に活動するクラブもあるし、スポーツや音楽はもちろん、陶芸やワイン造り、ヨガなど、多彩なジャンルがある。
クラブは基本的に掛け持ちもできるし、いつでも参加・退会できることが多い。忙しければ、休むか、活動日が少ないクラブに移ればいい。試合で勝ちたいのならば強いクラブに参加すればいいし、趣味程度なら、ゆるい活動をしているクラブに参加すればいいのだ。最初は初心者向けのクラブに入り、その後、中級、上級クラブに移動することも可能だ。費用はクラブによるが、筆者が参加していたバドミントンクラブは、月10ユーロ(約1230円)だった。
筆者のパートナーが参加している卓球クラブの練習を見に行ったことがあるが、部活とはまったく違った雰囲気だった。中高生世代も大人と一緒に練習していて、年上が年下を指導する、年下は準備と片づけをしなくてはいけない、ということはなく、家族や恋人を連れてきている人もいた。パートナーは年下のメンバーの進路相談にのり、パートナーもまた、仕事について年上のメンバーに助言を求めていた。世代や立場を超えた交流は、社会性を身に付けるのに役立つし、将来の視野を広げることにもなるだろう。年齢を問わずに参加できる開かれたコミュニティは、地域の活性化にもつながっている。
日本の部活では、先輩との上下関係は学べても、年齢や立場を超えた幅広い交流は難しい。放課後、気軽に参加できるというメリットもあるが、それは「家か学校にしか居場所がない」という状況にもつながりかねない。
2013年の神奈川県の『中学校・高等学校生徒のスポーツ活動に関する調査報告書』では、「部員以外の地域の人々と一緒に運動部活動に参加すること」を、62.9%の中学生が肯定的にとらえている。「他の学校の生徒と合同の運動部を作り、練習や大会参加など一緒に活動すること」は、62.7%の生徒が肯定的だ。また、「1年間のある時期に休みの期間を設けること」に関しては84.9%が肯定的となっている。今求められているのは、横のつながりと適度な活動頻度だということがわかる。「開かれたコミュニティでゆるく活動したい」という生徒にとっては、部活よりもドイツ流のクラブ活動が合っている。
■歴史的な違いも、確かにある
ドイツで市民クラブが盛んなのは、積極的な市民による自治の歴史や、それによる市民活動の社会的認知、さらには学校が昼に終わることが多いこと、充実した助成金などの理由が挙げられる。日本がすぐに同じような制度を整えるのは難しいが、「地域の社会的活動」のモデルとして、参考になるのではないだろうか。
たとえば、水曜日は体育館を使う部活を休みにして、地域に開放するのはどうだろう。「年齢を問わない趣味のバスケットクラブ」でもいいし、「経験を問わないバレーボールクラブ」でもいい。少しの参加費を徴収し、自治体が助成金を出せば、指導者に多少の謝礼も払えるだろう。スポーツ科学を学んでいる大学生や、スポーツトレーナーの卵などに声をかけることも可能だ。部活に参加している生徒や顧問は休めばいいし、部活とは違う場でスポーツをしたい生徒や社会人などは、そういった日に参加すればいい。クラブは、中高生にとってだけではなく、社会人にとっても、交流、生涯学習生涯スポーツの場として重宝されるだろう。
最近は教師の長時間労働や中高生の部活疲れなどが取り上げられ、部活のあり方が問われている。だが、「部活をどうよくするか」だけでなく、「部活以外の場」に目を向けることも必要だ。そのとき、ドイツのような市民クラブがあれば、「もうひとつの選択肢」になるのではないだろうか。



穴瀬博一