視点・論点 「学校が地域を変える」①

これからは田舎の学校にこそ可能性がありそうだ。
学校が地域を変え、人を繋げていく。地域共同体再生の流れが自然発生している。
NHK 解説委員室 解説アーカイブス  より転載です。
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視点・論点 「学校が地域を変える」
2015年02月19日 (木)
島前高校魅力化コーディネーター 岩本悠
昨今“地方創生”について注目が集まっていますが、多くの議論は地方への移住定住や雇用の創出に関してばかりです。しかし、中長期的に考えれば、東京から地方へ人やお金を送るだけでなく、仕事をつくれるような人を地方が育てていくような仕組みも重要です。今回は、島根県隠岐島前高校の魅力化プロジェクトの事例をもとに、地域における人づくりや教育、学校の果たす役割と可能性について考えてみたいと思います。
プロジェクトの舞台は、島根県の沖合い60km、隠岐諸島の島前です。この島前地域の唯一の高校が島前高校です。島の若者の多くは卒業後、進学や就職のために都市部へ流出し、人口も減少、超少子高齢地域となっていました。平成10年頃には70 人程度いた島前高校の入学生も平成20年度には半分以下の28 人に激減し、統廃合の危機に直面していました。
学校がなくなることは、地域にとっても計り知れない損失です。島に15歳から18歳の若者はいなくなります。また、島外の高校に通うと仕送りなどにより家計は圧迫され、家族での島外流出も進みます。子どもを持つ若年世帯層の島へのUターンやIターンは激減。超少子高齢化に歯止めがかからない状態になります。
 
こうした学校と地域の危機に対して、「島前高校魅力化プロジェクト」が平成20年から始まりました。子どもが「行きたい」、親が「行かせたい」、地域住民が「この学校を活かしていきたい」と思うような魅力ある高校づくりを通して、魅力ある人づくり、そして持続可能な地域づくりを目指そうというのが目的です。学校だけでなく、島前3町村の町村長を筆頭に、保護者や住民、地域の民間事業者やボランティア団体なども巻き込んで、まさに地域ぐるみで取り組みを進めています。私は、島前に移住し、コーディネーターとしてこのプロジェクトに8年間携わってきました。
 
プロジェクトで最も力を入れたのが「地域の未来をつくる人材の育成」です。島前高校の卒業生の95%以上の生徒は進学や就職で本土に出ていき、将来島に帰ってくる割合は約3割です。島を出た卒業生に「地元に帰らない理由」を尋ねると、多くが「帰りたいけど、働く場所がない」「仕事がないから、帰れない」などと答えます。
プロジェクトでは、地域への誇りと愛着を育むことに加え、「仕事をつくりに島へ帰りたい」「自分のまちを元気にする新たなことを起こしていきたい」といった地域起業家精神の育成も重視しました。
 
そこで、島前高校では地域を舞台としたキャリア教育を展開することにしました。「島全体が学校」「地域の人も先生」というコンセプトのもと、生徒たちが実際のまちづくりや商品開発などを行うことで、創造力・主体性・コミュニケーション能力など社会で活躍するための総合的な人間力を磨くカリキュラムを設けました。
例えば、このカリキュラムの中では、地域内外のエキスパートの協力を得ながら、現実の地域の課題解決に挑戦する授業をしています。生徒それぞれの興味に応じてプロジェクトチームを組み、船とバスのダイヤ改正や新たな観光マップの作成など様々なテーマに取り組んでいます。
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(②につづく)



孫市