日本の教育はどう変わる?~アクティブ・ラーニングの実践者・石川一郎さんに聞く~③

■日本のアクティブ・ラーニングの「いま」とこれからの課題
※いま日本で行われているアクティブ・ラーニングはほとんどが「アクティブ・ラーニングのようなもの」だと私は思っています。
・「ようなもの」ですか?
※はい。たとえば、最初に例に出した応仁の乱であれば、教科書のそのページを示して、生徒さんをいくつかのグループに分け「この争いについて自分たちで調べて、発表しなさい」という授業がいまの日本の学校で一般的に行われているアクティブ・ラーニングです。しかし、これでは「知識を覚える」「知識を要約する」という2つの段階で終わってしまいます。もちろん、自分で調べることで知識が身につきやすくなるかもしれませんが、アクティブ・ラーニングで一番大切なのは「クリティカル・シンキング」や「クリエイティブ・シンキング」の部分なんです。
・アクティブ・ラーニングの意味が誤解されているということでしょうか。
※そうですね。日本ではまだ「クリティカル・シンキング」や「クリエイティブ・シンキング」まで授業を発展させている学校や教員はそれほど多くありません。さきほど言ったような「自分ならどうするか?」といった、クリティカル(批判的)な問いはお子さんたちにとっても、知的好奇心を刺激するおもしろいものです。こうした「正解のない問い」に対していろんな意見が出るからこそ、学び合いの効果が得られると私は考えています。
・教育の現場でも、新しい指導法に対してまだ混乱があるのかもしれませんね。
※はい。事実、「アクティブ・ラーニングで基礎的な学力は身につくのか」という議論もあると聞きます。しかし、アクティブ・ラーニングとは、身につけた知識を論理的に展開させる学習なのです。知識がなければ論理的に考えることもできませんし、アイデアも出ません。
・では知識を覚えることや基礎的な学力をつけることと、アクティブ・ラーニングのバランスはどのようにとっていくべきだと思われますか?
※「全体の3分の1ほどをアクティブ・ラーニングの時間にあてるのがよい」というのが私の考えです。たとえば1コマ50分のうち35分は教科書の本文から知識を学ぶ時間にし、残り15分程度をアクティブ・ラーニングにあてるといった具合です。「正解のない問い」を投げかけてディベート形式などの学習をしていくことで、覚えた知識に対する理解もより深まっていくでしょう。
・アクティブ・ラーニングについて、ほかにどのような課題があるんですか?
※「アクティブ・ラーニングの評価をどうするのか」ということもよく話題になりますね。
・決まった答えがないだけに評価するのが難しそうですね。
※その点については、「ロジカル(論理的)かどうか」を測っていけばいいと思います。たとえば記述式の解答の評価のポイントは、5W1Hを意識しているか、因果関係をはっきりさせているか、理由の部分が客観的な意見かどうか、などです。決まった答えはありませんが、こうした軸に沿えばきちんと評価していけるのではないでしょうか。逆に、こうしたポイントで評価しますということを生徒さんたちに伝えていけば、論理的思考や論理的な文章の書き方を教えることにもつながると思います。
・「現場の教員がアクティブ・ラーニングに対応できるのか」という点も問題になっていますね。
※そうですね。いままでは正解を用意しておいて授業をまとめるのが一般的な授業の在り方でした。ですから、「正解のない問いを用意して、果たして授業がまとまるのか」という不安は多くの教員が感じていると思います。私が校長を務めた学校でも、最初は現場から不安の声もありましたが、実際に授業を始めてみて、生徒さんたちが生き生きと学ぶ姿を目にすると、教員の方々も安心してアクティブ・ラーニングの授業ができるようになりました。まずは教員のマインド(精神性)を変えていくことが必要だと、私は思っています。
・やはり教員向けの研修なども必要になってきますね。
※はい。私が行う教員研修では、アクティブ・ラーニングを教員自身に体験していただいたこともあります。実際に体験していただかなくても、アクティブ・ラーニングの実践例を見ていただき「同じテーマで授業をやってみる」ことが、アクティブ・ラーニングを授業に採り入れるきっかけになるのではないでしょうか。
~④へ続く~



A.i