フィンランドの教育改革 いじめを「傍観」させない

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 サングラスに長髪の少年が、別の少年に嫌がらせをしている。級友の一人は、いじめられている子に味方しようとしているが、他の子どもたちは遠くの方で「また、いじめが始まったよ」と見ているだけ。
 さあ、君はどうする? そのまま立ち去るのか、それとも、いじめられている子に話しかけるか……。
 こんな場面がネット上で展開されるゲームが、フィンランドの学校現場で活用されている。教育文化省が国立トゥルク大学に委託して小中学校向けに開発したいじめ防止のための学習プログラム「KiVa(キヴァ)」の一環だ。
 KiVaには、フィンランド語で「楽しい、心地よい」との意味がある。プログラムは、月に1回90分間、年10回行う授業と、合間に行うパソコンのゲームで構成されている。
 統一的なプログラムの導入にあたり、トゥルク大学の研究者らは子どもたちの調査を行い、いじめのメカニズムを研究した。その結果、興味深いことが見えてきた。「加害者と被害者の二人だけでは、いじめは成立しにくい。周囲に自らの力を誇示するために、繰り返しいじめをするケースが多い」と、トゥルク大学の国際渉外担当、ピア・ルグランさんは強調する。
 いじめに加担していなくても、周囲で見ている「傍観者」の存在が、いじめを助長しているというのだ。
傍観者をなくす
 KiVaのプログラムは、傍観者をなくすことこそが、いじめの拡大を防ぐと位置づけている。授業でも、いじめが起きた際にどう行動したらよいかを学ぶロールプレイングや話し合いをして、いじめられている子に声を掛けることや味方になることの大切さを学習する。
 プログラムに参加する学校では、校長や教師、スクールソーシャルワーカーなどの教職員3人以上で構成する「KiVaチーム」が常設され、いじめへの対応にあたる。休み時間には、当番の教員が緑色のベストを着用するように推奨されている。「どの先生に相談すればいいか、生徒に一目で分かるようにするためです」と、ルグランさんは説明する。保護者向けの啓発パンフレットも作成している。
 KiVaへの参加は任意だが、約9割の小中学校が採用している。フィンランドの基礎教育法は、子どもの安全な学習環境を確保することをうたい、政府はいじめ対策を最優先課題の一つに位置づけている。
 トゥルク大学が2006年から開発したKiVaプログラムは、09年から本格的に各地の小中学校に普及した。各校でいじめを予防し、効果的な対策を練ってもらうのが目的だ。
 導入した学校ではいじめ被害の報告件数が減ったという調査結果があり、ヨーロッパの他国や米国などにも「輸出」されている。日本の自治体でも試験的に採用した例がある。
 いじめの当事者だけでなく、周囲の級友たちに働きかける取り組みの有効性は、日本の専門家からも注目されている。教師の目が届く範囲は限られており、傍観者をなくし、学級全体の意識が変われば、大きな防止効果があるのではないだろうか。




す太郎