「夏休み10日間」への短縮は日本を衰退させる 静岡県吉田町の施策に唖然、呆然②

②の続きです。
以下リンクより
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本当に学力の底上げをしようと思ったら、教員の数を増やして少人数教育に舵を切る必要があります。OECD各国はすでに実行していて、たとえば教育立国として以前から注目されているフィンランドでは、ひとクラスが20人前後です。以前、私の同僚がフィンランドに1カ月間の視察に行き、その報告を聞いたときは日本とのあまりの違いに愕然としました。それによると、複数担任制も取り入れていて、20人の子どもを2人の先生で指導していたそうです。しかも、算数・数学などではアシスタントの先生も加わります。それでも、ついていけない子はスペシャルティーチャーが個別に教えるそうです。
そこまでは難しいとしても、自治体の予算で教員の数を増やすことはすぐにできます。そうすれば教員の長時間労働の解消もできます。でも、これは本当は国レベルでやらなくてはならないことなのです。しかし、そういう動きは一向に見られません。日本はOECD加盟国の中でGDPに占める教育予算の割合が最下位(2015年)であり、それを恥ずかしいと思う気持ちすらないようです。
OECD各国の夏休み事情
さて、ここでOECD各国の夏休み事情を見てみましょう。アメリカの夏休みは州によって違いますが、短いところで2カ月半、長いところは3カ月です。学年の変わり目でもあり宿題はありません。子どもたちは、キャンプ、自然体験、スポーツ、水泳、レクリエーション、遊び、各種アクティビティなどに没頭します。さらに、春休み5日、感謝祭休み7日、クリスマスを含む年末年始の休みが15日あります。
ドイツも州によって違いますが、夏休みは約6週間で日本とほぼ同じです。ところが、その他の長期休暇がたくさんあって、秋休み1~2週間、クリスマスの休み1週間、冬休み1週間、イースターを含む春休み2~3週間、聖霊降臨祭が12日です。
フィンランドの夏休みは2カ月半です。その他にも、秋休み1週間、クリスマス休暇2週間、スキー休暇1週間、イースターを含む春休みがあります。ドイツもフィンランドもアメリカと同じように夏休みの宿題はなく、子どもたちは各種の遊びやアクティビティに精を出します。そして、他のヨーロッパ各国もだいたい同じような感じです。
私は、こういったオンとオフのメリハリのある生活を謳歌してきた子どもたちが大人になると、やはりメリハリのある仕事ができるようになるのだと思います。私は経済の専門家ではないので断言はできませんが、それが国民1人当たりのGDPとも無関係ではないのではないかと思います。
※国民1人当たりの名目GDP順位(2016年)
アメリカ8位、フィンランド17位、ドイツ19位、日本22位
日本の国内総生産GDP)は、アメリカと中国についで世界3位で、私たちは経済大国だと思っています。でも、国民1人当たりの名目GDPは世界22位であり、その生産性は極めて低く、国民1人が生み出す付加価値はとても少ないのが実態です。
子ども時代に日本の2倍もある長い夏休みを謳歌しているアメリカ人の、1人当たりGDPは日本の約1.5倍にもなります。日本がGDPで世界3位でいられるのは、ヨーロッパのどの国より人口が多いからにすぎません。
もちろん、日本の生産性が低い原因は数多くあると思いますが、私はオンとオフのメリハリのない仕事ぶりもその原因の1つではないかと思います。
□一年中忙しい状態になってしまう
夏休みを減らして授業できる日数を増やせば、先生の長時間労働がなくなるとのことですが、これもありえないことです。なぜなら、先生たちは夏休み中も暇なわけではなく、数多くの仕事をしているからです。
保護者面談、学習遅進児の個別指導、指導要録の記入、個人カルテの記入、健康診断表の記入、学級事務、会計処理、備品整理、各分掌の仕事、校内研修、指導計画の作成、教材研究と授業準備、理科室や体育用具の点検・整理整頓、グランド整備、プール当番、花壇や学校農園の整備、校舎の床のワックス掛け、図書館蔵書の点検・修理、遊具の安全点検、運動会や修学旅行など各種行事の計画立案と会議、その他諸々の会議、幼稚園・保育園・中学校などとの情報交換、地域の関係各機関との連携会議、PTAの会合など、普段できないような仕事を数多くやっています。
夏休みが短くなれば、これらの仕事がこなせなくなり、普段の授業のある日にやることになります。ですから、吉田町の案によって、1日6時限まである時間割がなくなり、4~5時限まででおさまるようにしても、その空いた時間で今まで夏休みにやっていた仕事をやらなくてはならないのです。結局、普段できない仕事をまとめてできる夏休みさえ短くなり、一年中忙しく追いまくられるという状態になるだけです。
夏休みを含めて休日が減れば、子ども連れで出かけたり子どもが欲しがる物を買ったりすることも減り、日本経済にとっても大きなマイナスでしょう。また、大人たちが国を挙げて「働き方改革だ。働きすぎをやめてワーク・ライフ・バランスを大切にしよう」などと言っておきながら、子どものスタディ・ライフ・バランスは無視するというのもおかしな話です。子どものときはバランスを無視しておいて、大人になって急に「ワーク・ライフ・バランスの実現を」と言っても無理です。
子どもたちは夏休みを本当に楽しみにしています。それがたった10日になるなんて、かわいそうすぎます。休みが減ったら大人だって嫌でしょう。自分が嫌なことは子どもにも押しつけてはいけないのです。大人になるとなかなか休めません。せめて子どものときの夏休みくらいは休ませてあげてください。子どもの楽しみを奪わないでください。ですから、吉田町にお願いです。今ならまだ間に合います。ぜひ、勇気ある撤回をしてほしいと思います。
先進各国では子ども時代の夏休みを謳歌し、大人になってからも2カ月のバカンスをエンジョイし、しかも仕事の生産性も高く1人当たりのGDPも高い。ひるがえって日本は? 
テレビなどでは、「ニッポンはすごい」とひたすら持ち上げる番組が流行っていますが、喜んでばかりはいられない不都合な現実があります。私たちは、なぜ、このように子どもの頃から追いまくられなければならないのでしょうか?もう一度よく考えてみる必要があるのではないでしょうか?



水沢奈々