理論(追求)と実践(働くこと)の両輪から新しい学ぶをうむ六郷工科高校「デュアルシステム科」

高校で大きな転換が起きている。ものづくりの街として知られる東京都大田区・六郷工科高校では、半分を学校で理論を、半分を企業で実践をという、2つのサイクルを組み合わせて新たな学びを生み出している。
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東京)こどもの未来へ/都立六郷工科高校「リンク」
◆学校で理論 町工場で実践
 約3500の工場がある「ものづくりのまち」大田区。地元の都立六郷工科高校は、学校と現場の町工場、両方で学ぶ実践的な教育を取り入れている。「二つの」という意味のdualを冠した「デュアルシステム科」だ。企業実習は町工場の後継者育成の場でもあり、実習先にそのまま就職する生徒もいる。
 月曜の午前、機械加工実習室で、デュアルシステム科の2年生が旋盤で金属の加工をしていた。目盛りを見ながらハンドルを動かし、20分の1ミリの精度で図面に合わせて削っていく。菅原久琳(くりん)さん(17)は「技術を生かし実習助手になって旋盤の面白さを生徒に伝えたい」。摩擦で熱せられた削りくずが飛び、軽いやけどは絶えないという。
■近隣の260社と協力
 デュアルシステムはドイツで始まった学校と企業双方で人材育成を担う制度。2004年度に開校した同校は当時、文部科学省の「日本版デュアルシステム」の指定校として科を設置。生徒は学校で理論などの基礎を学び、企業で実践を学ぶ。同科の1学年の定員は35人。カリキュラムは基礎学力をつける普通科目、校内で工業系の学習や実習をする専門科目、企業で学ぶデュアル科目から成る。
 同区の中小企業を中心に約260の企業と協力し、1年生で7、8社の見学と5日間のインターンシップを2回、2、3年生はそれぞれ1カ月間の就業訓練を2回経験する。同じ企業で経験を積む生徒もいれば、違う企業を経験する生徒もいる。学校は生徒の性格や得意分野などの情報を実習先の企業と共有し、実習中も生徒の様子や対応の仕方などをやりとりする。
■仕事が責任感を育む
 実習中、生徒は毎日、社員と同じように出勤する。野沢幸裕デュアルシステム科主任(56)は「学校で過ごすのとは責任感が違う。普段、遅刻の多い生徒も毎日定時に出勤している」と話す。精密金属加工の会社で実習した2年の大滝沙樹葉(さきは)さん(17)は「2回目の実習で『この仕事、やってもいいですか』と自分から言えるようになり、ちょっと役に立てた気がした」と振り返る。
 企業から「うちには向いていない」と厳しい指摘を受けることがある一方、「ぜひ、うちに就職して」と声がかかることも。昨年度の卒業生26人のうち、半数の13人が協力企業に就職した。実習で受け入れた男子生徒を採用予定の昭和製作所の舟久保利和社長(37)は「地元の人材育成の役に立ちたい。大田区の工場ではどんなことをしているのか、生徒が具体的なイメージを持てるようにしている」と取り組みを話す。
 協力企業への就職だけが目的ではなく、実習を通して生徒自身が適性を知り、進路決定につなげたい考えだ。毎年ほぼ全員が卒業までに進路を決め、離職率は低いという。野沢主任は「中小企業のアットホームな雰囲気の中で生徒は多くの大人と接し、刺激を受ける。仕事を任せてもらえるようになり、責任感が育っていくのは、企業との連携の成果」と話す。
(斉藤純江)



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