実力派の高等教育機関「高専」が注目されている。② ~今、高専が熱い。

AERA 2017年8月28日号記事より
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(①の続き)
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 引く手あまたなのは在学中に限った話ではない。就職率は例年ほぼ99%以上と大学を上回り、三菱重工JR東日本日立製作所といった大企業にも就職している。大手で活躍している卒業生も多いのだ。
 さらに新しい動きも。最近増えているのは“女子学生”。年々増加傾向にあり、現在は約20%を占めるほどに。大舞台で成果も上げている。
 高校生年代を対象とした世界最高峰の科学大会で上位入賞したのは、米子高専鳥取)の前田千澄さん(物質工学科5年)と、山村萌衣さん(同4年)のペアだ。16年5月8日から1週間、米国アリゾナ州フェニックス市であった「インテル国際学生科学技術フェア(Intel ISEF)2016」。世界77の国と地域から選抜された約1700人の生徒が参加するこのフェアで、燃料電池電解質膜を卵の膜で代用し発電させることに成功していた前田さんら2人は、研究成果を発表。結果、エネルギー・ケミカル部門のグランドアワード第2等(全体の上位6%)に選出されたのだ。
●「テスト期間をのぞいた1年間ほぼ毎日研究」
 受賞の背景には、腰を据えて研究に取り組める環境があった。前田さんは2年、山村さんは1年次に、同科の谷藤尚貴准教授が主宰する「B(biology)&C(chemistry)研究同好会」に参加。先輩が行っていた燃料電池の研究を受け継ぎ、既存の電解質膜に代わる材料として「空気を通すけれども中身は腐敗させない」性質を持つ野菜や果物の皮、卵の膜に着目した。卵の膜が一番適していることがわかり、性能を上げる実験に取り組んだのだ。
「テスト期間をのぞいた1年間ほぼ毎日、土日や夏休みも研究室に通いました。まったく変化があらわれず、このまま続けて成果を上げることができるのか、気持ちがなえそうになったこともありました」(前田さん)
 地道な実験が実り、電池キット2個でLEDライトの赤色、5個で青色を灯すことに成功。15年に開催された、intel ISEF提携フェアで朝日新聞社など主催の高校生科学技術チャレンジコンテストに入賞し、出場権を獲得したという。米国大会までは5カ月間。2人は発表資料を英訳するかたわら、想定される質問の受け答えを英語で猛特訓し、大会では通訳の助けを借りずにポスターセッションに臨んだ。
「他国の生徒たちは、多少英語ができなくても、堂々と発表していた。世界を肌で感じることができました」(山村さん)
 来春卒業する前田さんは広島大への編入が決まっており、大学での研究を楽しみにしている。
●2割超が大学に“編入”
 時間をかけて学び、専門性も身につける高専の学生には、同じ教育機関からも熱い視線が送られている。前田さんのように大学に編入する道が広がっているのだ。
 通常、3年生へ編入するといい、16年度の国立高専本科卒業生9千人のうち、大学への編入率は23.6%。東大をはじめ、京大、東工大など難関大に進む学生も多い。17年は東京大へ13人、東工大へ35人が編入した。
 東大院で建築学を専攻する石田崇人さんは、小学校の頃から建物好きで明石高専(兵庫)の建築学科に進学。14年に卒業し、東大工学部に編入したという。大学卒業時には各学科1人に与えられる工学部長賞を受賞。卒業制作でも、学部の最優秀賞を獲得した。
「すでに建築の専門的な研究を高専で行っていたので、同期に比べて広い視点で学ぶことができたと思う」(石田さん)
 現在の研究テーマは、建物を長持ちさせるためのメカニズムの解明で、「人が住む家には、人の記憶が残る。そんな家をいつまでも残したい」という。
 企業や大学、最先端の現場から注目される高専の強さはどこにあるのか。国立高等専門学校機構学生指導支援室・本江哲行室長は言う。
高専の授業は知識と実体験・実習のバランスが良く、実践的なカリキュラムで学ぶため即戦力として社会的ニーズも高い。そこが重宝されているのでしょう」
 今、高専が熱い。(ライター・柿崎明子)
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太刀川省治