「ブラック部活」は教師も生徒も地獄なのになぜなくならないのか

長時間の厳しい練習で教師や生徒を追い詰める「ブラック部活」。なぜ、教育現場であるはずの学校で“ブラック”な状況が発生するのか。体育学者で早稲田大学准教授の中澤篤史氏に聞いた。
■教師も生徒も追いつめられる!誰も幸せでない“ブラック部活”の現状
「ブラック部活」という言葉が使われるようになって久しい。この言葉は、無理やり長時間のハードな練習に参加せざるを得ない生徒の立場を指すこともあれば、顧問として部活指導にあたる教師の労働環境を指す場合もある。
「“自主的な課外活動”であるはずの部活なのに、教師も生徒も無理して部活をしている状況になっている」と、話すのは、体育学者で『そろそろ、部活のこれからを話しませんか 未来のための部活講義』の著者である中澤篤史氏だ。
各種調査によると、中学生の9割、高校生の7割が参加しているという部活。しかし、すべての生徒が自主的に楽しく部活を続けているかといえば難しいところ。実際には、部活内のイジメや、度を越した顧問の指導を苦に自殺する生徒のニュースもしばしば報道される。2017年5月には、埼玉県川口市の中学校に通う女子生徒が、部活の悩みが原因で自殺したと報じられた。少なくとも、長時間のハードな練習が重荷になっている生徒は一定数いるのではないか。
そして、部活の練習が毎日のように続けば、当然、顧問を務める教師もしんどくなる。ましてや、教師は普段から授業やもろもろの業務に追われているのに、その上に部活の負担が覆いかぶさってくるのである。その勤務実態は過酷極まりない。
筆者の知人にも関東の公立中学校で教鞭をとっている20代の女性がいるが、彼女は授業が終わったあとに部活に出て、その後、職員室に戻り授業準備などをこなす。「帰宅するのは日付が変わる頃、翌日も朝練のために朝6時には起きないといけないし、土日も大会や練習試合がある」と漏らす。
このような生活が数ヵ月続き、睡眠不足のせいで通勤途中に自動車事故を起こしかけたもこともある。
中澤氏も、過度な部活の負担が、教師の労働問題を悪化させるひとつの原因になっていると指摘する。
「部活の指導手当については、土日に出ても数千円程度と、最低賃金を下回っている学校も多い。また、日本の公立中学校の教師は約6割が、残業月80時間の過労死ライン越えとなっています。しかも、部活はあくまで“自主的な課外活動”とされているので、もし部活の影響で病気や死にいたった場合でも、労災がおりるかどうかはあいまいで、はっきりしません」(中澤氏、以下同)
すべての教師が好んで部活指導をしているとは限らない。特に若手の教師だと、半強制的に顧問にならざるを得ないこともあるという。望まぬハードスケジュールで心身に異常をきたしても、「自主的にやったこと」と見なされるのは理不尽な話である。
教師も生徒も疲弊しているのに、なぜブラック部活はなくならないのか。日本でここまで部活が肥大化した一因として、部活がスポーツであるのと同時に「教育の一環」という認識が広まっているからだと中澤氏は説明する。
■行政が手を引いて法の枠外に現場で暴走する部活の悲劇
スポーツと教育との結びつきが強固になった結果、部活は自由な課外活動の域を超え、ほぼ強制的に教師も生徒も参加せざるをえない状況になった。しかしながら、現在でも部活は教師や生徒が「自主的」に行っている活動、という建前が横行している。
「98・99年には学習指導要領から必修クラブ活動がなくなったため、部活はあくまでも教師や生徒が『自主的』に取り組む活動となりました。行政が手を引き、部活は法の枠外に置かれるようになったため、部活は現場レベルで浸透していき歯止めがきかなくなったのです」
いまだに部活には「教育」という付加価値がついており、現場の教師もしんどくても声を上げにくい空気となっている。
「しかし『ブラック部活』という言葉が取り上げられ、多くの人の関心を集めている今、日本の部活が“当たり前”ではないということを周知して現状を変えて行くべきではないでしょうか。本来、部活は学校に通う子どもに対して、平等に機会を与えることができる素晴らしいものなんです」
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中 竜馬