延滞者17万人「奨学金」に追い詰められる若者たち その②

その①より
■「入口と出口がねじ曲がっている」
「少しでも学びたい」「親に頼らず、卒業したい」という思いを抱え、20歳前後で「奨学金」に頼った人たちが後年、貸金訴訟の被告になってしまう。しかも、そのリスクは奨学金を借りるとき、ほとんど認識されていない。その点にこそ問題がある、と専門家は言う。
聖学院大学のキャンパスは埼玉県上尾市にある。政治経済学部政治経済学科の柴田武男教授に話を聞いた。金融市場論が専門で、奨学金問題にも詳しい。
柴田教授は「奨学金の入口と出口がねじ曲がっている」が持論だ。どういう意味なのか。少し説明してもらった。
「(貸与奨学金は)10代の若者に何百万円の借金を無審査で貸し出すのです。どこの大学に行くかわからないし、まして(将来の)職業なんかわからない。だから入り口は奨学金の性格。ところが出口の返済になると、金融機関の論理がむき出しになる。ちゃんと返済しなかったら遅延損害金をつけますよ、払わなかったら裁判にかけますよ、親から取り立てますよ。まさに金融の論理になる」
入口は学びを助ける奨学事業。出口の返済では、金融業。その落差が奨学金問題の根本にある、との指摘だ。
支援機構は一般の金融機関ではないが、貸付金の原資の6割を返済資金で賄っているという。支援機構にすれば、返済が滞ると、新たな奨学金を出せなくなるというジレンマがある。
■「奨学金という名前がよくない」
同じ埼玉県には、奨学金問題を考えるネットワークがある。弁護士を中心に2013年から活動を続けてきた。返済に苦しむ人たちへのアドバイスや駅頭での宣伝のほか、制度の改善策なども話し合う。
ある日の会合には、奨学金担当の高校教員も参加していた。
「4年間借りて(大学卒業後に)返済することになるけど、月々の返済額がいくらになるか、ほぼ分からない」と教員は明かす。進学に際して奨学金に助けを求める高校3年生自身、借り入れと返済の内容を把握できていないというのだ。
いくら借りて、いくら返すのか。それすら分からない状態で、「利子付き奨学金」の利用は始まり、若者を将来にわたって苦しめる、と同ネットワークのメンバーたちは訴える。
そのうえで、返済義務のない「給付型奨学金」の創設が必要だと強調した。同ネット事務局長の鴨田譲弁護士によると、経済協力開発機構OECD)加盟34カ国のうち、大学の授業料が無償の国は17カ国を数える。ちょうど半数だ。
さらに「給付型奨学金」をみると、国としての制度が存在しないのは日本とアイスランドの2カ国しかない。アイスランドは授業料が無償だから、「授業料有償+給付型奨学金なし」は日本だけだという。
奨学金返済の悩みを抱える若者の声をもう1人紹介しよう。
千葉県に住む酒井弘樹さん(仮名)、23歳。大学卒業後、公務員になり、2015年秋から返済が始まった。手取り20万円ほどの給与から、毎月1万6000円が返済で引かれていく。返済総額は約404万円。250回払いで、完済は40歳すぎになる。
この月々の返済額、多いか少ないかは、人によって見方が異なるはず。酒井さん自身は就活で苦労したこともあって、フリーターの状況で返済するとなったら、自分も延滞しただろう、と感じている。けがや病気も心配だが、保険料を考えると、生命保険にも入れない。
そしてこう付け加えた。
奨学金という名前がよくない。お金で困っている貧困層の学生にお金を貸し付けますよ、ほかの民間より利率が安いですよ、というのであれば……。返せない方はそこを勘違いしてしまうのでは。『奨学金』だとお金がもらえると思ってしまう。自分もそうだった。安易だった」
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