市川高校の「棚田ビジネス」は何が秀逸なのか

学校の教育改革が課題として顕在化している昨今。社会の課題を捉え、たくさんの人を対象に役に立てるかを考えていくことこそが最高の学びであることに改めて気づかされる内容です。
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「高校生の熱い闘い」というと、甲子園、高校サッカー高校バレー、インターハイなどを思い浮かべがちですが、新しい事業プランで地域活性化や社会課題の解決を図る高校生のコンテストも盛り上がっています。
高校生ビジネスプラングランプリは、高校生が身近な地域課題や社会問題などをビジネスの力で解決しようという心意気でつくるビジネスプランのコンテストです。
(中略)
そして、今年のグランプリの栄冠を勝ち取ったのは、千葉県の市川高等学校。テーマは「棚田の未来を守れ!」です。山の斜面に階段状に作られた棚田は、日本の原風景と言われ、水源確保や防災に貢献し、外国人観光客にも人気です。
しかし、近年、農家の高齢化や機械導入の難しさにより、耕作面積は半減、衰退が進んでいる状況。そこで、高校生たちはIoTを活用した自動運転の小型稲刈り機を開発し、省力化を進め、あわせて棚田でできた米のブランド化による販売促進をすることで、棚田農業の新たな発展を目指します。
小型稲刈り機はまだ試作段階ですが、稲を根元から刈るのでなく、穂先を切ることで機械の小型化を実現し、狭い棚田でも稼働する工夫をしています。また、棚田の米は風通しの良さ、昼夜の寒暖差、土壌や水の恵みを受け、美味しく、栄養価が高いと言われています。この点を強調しブランド米として販売して、その参加権を全国の棚田農家に提供しようというプランです。
そして、注目すべきはチームの行動力。千葉や佐渡の農家の話を聞くことからはじめ、機械開発にあたってはリコーの中央研究所を訪ねて、製品改良の手順やIoT化の実装技術を聞いています。そして、棚田米のブランド化についてはJAL地域活性化推進部等を訪問し、農法や食文化の重要性などのストーリー作りの指導を受けています。より多くの棚田米ファンをつくるためJAL機内食での棚田米の使用も提案中です。
(中略)
審査員として経営者の視点から審査にあたった(株)ベアーズ取締役の?橋ゆき氏は学生の取り組みについて以下のように語ります。
「今回、グランプリ、準グランプリになられたプランは、高校生たちの豊かな感性と感度がすばらしかったです。ビジネスでは、発想とか想像力をベースに、売上や利益が見込めるようなプランを作ることが大事。これからも、『思考と行動』『人と人』『生活と社会』のつながりを研究し、地域や社会や国を、未来に向けてより豊かにするという発想で、持続可能な売上と利益を生み出すビジネスを作っていってもらいたいです。また、先生方が熱い思いで、感動のあまり涙を流され、喜んで写真を撮られているという姿が微笑ましく、毎回とても楽しみです。高校生が動けば世界は変わります。人生まるごと愛して、夢に向かって邁進してほしいと思います」
■新しい教育の観点からも注目
審査員長の樋口美雄慶應義塾大学教授は語ります。
「今回、入賞を逃したプランにもすばらしい、何とか実現してほしいプランがたくさんありました。高校生らしいプランも多数。地域の抱える問題、社会問題に高校生が取り組む中で、チャレンジ精神を高めることができます。今後の教育を考えるうえでこのような起業家教育は重要です。文部科学省中央教育審議会で、今後のカリキュラム、基本計画の見直しをしていますが、私はその中で起業家教育を入れてはどうかと提案しています。この高校生ビジネスプラングランプリはその一つのモデルケースとなると思います」
アクティブラーニングが注目される中、教員の側でもこのような取り組みの重要性に着目する声が上がっています。岡山県の倉敷鷲羽高校でファイナル連続出場を実現してきた福岡明広教諭(現在は岡山東商業高校教諭)は語ります。
「教育大改革がやってくる中、今まで以上に子どもたちが主体的に考えながら学ぶ環境を作ることが重要です。私が思うに、アクティブラーニングはやろうと思うとなかなかできない。グランプリに参加するというアクションを起こすこと自体がアクティブラーニングに繋がります。その意味で、手軽な手段として活用すべきと思います」
■高校生の真摯さの力
この最終審査会の名物は、先輩の経営者の講演と参加高校生との対話です。ロールモデルとなる大人に会うことが起業家教育では大事ですが、審査会でもその機会を提供しています。第1回のガンホー・オンライン・エンターテイメント創業者の孫泰蔵氏に始まり、ユーグレナの出雲充社長、リブセンスの村上太一社長、ウォンテッドリーの仲暁子社長が高校生と語り合っています。
今年は、人工クモ糸の合成に成功し、石油に依存しない新素材で未来を切り開くスパイバーの関山和秀社長。成長企業の経営者として邁進し、講演会などにはあまり顔を出さない関山氏が、この日は「人生とは何か」といった深い話を含め高校生とじっくり対話しました。参加する経営者も熱心な高校生を前に講演や意見交換に熱が入ります。
筆者は、毎年、グランプリの審査員を務めているのですが、審査をすると同時に、日本の未来は明るいという気持ちをいただいているような気がしています。
粗削りなプランも多いのですが、伸び伸びとしており、そして何よりも「真摯」な気持ちが伝わるビジネスプランが提案されています。プレゼンテーションも想いがこもっています。私たちが甲子園や高校サッカーなどの高校スポーツに思わず見入ってしまうのは、この真摯さに魅力を感じているからではないでしょうか。
全国のいたるところで、真摯に地域や社会の課題をビジネスの力で解決しようというプランを考え、行動する高校生が増えています。このような高校生が地域を元気にし、経済を元気にしていくと思います。高校生ビジネスプラングランプリのさらなる拡大を期待しています。




高橋謙太