「東大は選択肢の一つ」 新興校の渋幕、なぜ急伸

「東大は選択肢の一つ」 新興校の渋幕、なぜ急伸
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東京大学など国内外の難関大学の合格実績が急激に伸びている中高一貫の私立校、渋谷教育学園幕張中学校・高等学校(渋幕、千葉市)。1983年に千葉の幕張新都心に開校した新興校は2012年に東大合格ベスト10、16年からはベスト5に躍進し、17年の現役合格者数では名門の麻布高校を超えた。くしくも渋幕を創ったのは麻布、東大出身の田村哲夫校長(81)だ。ハーバード大学など米国の名門大学の合格でも全国の先頭を走り、グローバル人材の育成校として注目を集める。千葉市の渋幕を訪ねた。
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■渋幕と渋渋、国際イベントを共催 海外の24校が参加
 18年夏には世界のトップクラスの高校生らが集う「Water is Life (ウォーター・イズ・ライフ)」という国際イベントを両校で開催する。海外から24校、120人以上の生徒が訪日する。日本からも7校が参加。水をテーマにしたイベントで、トヨタ自動車など日本企業も協力する。「水のリサイクル技術などを企業側に説明してもらいながら、生徒たちが討論し合う場です。これをすべて英語で行います。日本語は使いません」と田村校長は話す。
 「渋幕の目標は教養豊かなグローバル人材を育てることです。生徒たちは世界の名門大学を目指しています。東大はその選択肢の一つです」と語る田村校長。あえて東大合格を目標に掲げず、海外の名門大学を目指すため、帰国生徒も積極的に受け入れた。80年代には東大合格を目標に掲げる新興校が関東にもいくつか誕生したが、渋幕以外はいずれも伸び悩む。田村校長は「東大合格が目標では、開成高校など伝統のあるブランド校にはかなわない」という。
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■音楽、美術 アートも重視
 グローバル人材を育てるため、田村校長は、自分で調べ、自分で考える「自調自考」を基本理念に「教養」を高める教育を実践。音楽や美術など芸術分野にも力を入れてきた。
「生徒は6年間で、必ず何か1つの楽器をやることになっています」と田村校長。音楽フロアの収納室にはバイオリンなどの楽器がズラリと並ぶ。ピアノの専用練習場もある。同じフロアには生徒が自ら予約しないととれない、2つの専用室もある。中を見ると、ドラムなどがあり、バンドの練習場になっていた。田村校長は「防音設備に費用もかかったが、バンドをやりたいという生徒が多かったので」と話す。
進学校なのに、なぜ芸術分野の教育にも積極的なのか。田村校長は「アートをしっかりやらないと、未来のリーダーにはなれません。欧米では芸術をよく理解しているリーダーが少なくないのです。リベラル・アーツ(教養)の終着の科目は音楽でしょう」と語る。
 理数系の施設はもっと充実している。理科棟には化学、生物、物理地学のフロアがあり、それぞれ2つの実験室がある。渋幕は、15年には「科学の甲子園」全国大会で優勝した。化学の担当教員の岩田久道先生は、「実験室には大学も驚くような設備もあります。有害気体を排出するドラフトも備えており、健康面にも留意しています。意外とこんな設備は大学にもないんですよ」という。コンピューター室などIT(情報技術)関連の設備も充実している。
図書館には6万冊の蔵書があり、貴重な「東洋文庫」もある。教養を磨くツールが盛りだくさんだ。その仕上げとして、高1~2年生の生徒全員が1年以上を費やして「自調自考論文」を書く。テーマは自然科学から社会科学、国際関係、芸術など自由だ。悪戦苦闘するうちに論述力が磨かれる。
グラウンドでは生徒たちが様々な競技に汗を流している。サッカー部は全国大会の出場実績がある。テニスも強豪校で、校内に3面のコートがあり、更に近隣に8面を新設した。「テニスの人気が高くて」と田村校長。経営も担う理事長でもあるが、とにかく生徒のニーズによく応えてくれる校長だ。
渋幕の施設や伸び伸びした生徒の表情を見る限り、「急伸した受験校」というイメージはない。だが、00年以降、進学実績はグイグイ伸びて、今や男女共学の進学校としては全国トップの実績だ。
■気になるのは海外大の合格実績
 渋幕高校の1学年の定員は335人。17年の合格実績は、東大78人(うち現役は61人)、京大11人、東京工業大学14人、一橋大学21人。国公立大学医学部医学科37人。ただ、田村校長が気にするのは「海外大学の合格状況です。今、うちのトップ層はみんなハーバード大など米欧の大学を志望しています。受験は10~11月にスタートし、最終的に合否が確定するのは次の年の6~7月と長丁場の戦いです。毎年、20~30人が海外大学に合格し10人前後の生徒が実際に進学しています」という。
海外大学の現役合格数(15~17年の合計)は72人。ハーバード大、プリンストン大、エール大など世界のランキング上位の大学も少なくない。
 英教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)によると、17年の世界大学ランキングで、東大は46位(前年は39位)で過去最低の順位になった。田村校長は「東大はいい大学。実際の実力は10位台でしょう。ただ、グローバルな人材になるにはもう少し世界を意識する必要はある」と強調する。




匿名希望