受験生のみなさんへ(内田樹の研究室)④

内田樹の研究室より転載します
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(③のつづきです)
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制度に欠陥があるというのは「よくあること」です。でも、制度の欠陥についての指摘を聞き流して、失敗を修正しないというのは「よくあること」ではありません。それはより深刻な出来事です。人間は誰でも病気になり、怪我をします。その時には、どの臓器や生体機能が不調であるか、どこの骨が折れ、どこから出血しているかについて吟味がまずなされます。そうしないと治療が始まらないからです。でも、今の日本では「日本の学校教育が海外から否定的評価を受けている」という事実そのものが隠蔽されている。それは制度を手直しし、補正する手立てを講じる機会そのものを放棄するということです。

 驚くべきことに、教育行政の当事者たちは今も自分たちの失敗を認めておりません。客観的なデータが「日本の教育は落ち目だ」ということをにべもなく伝えているので、やむなく「教育行政は一貫して正しい政策を行ってきたが、現場が言うことを聞かずに、閉鎖的で封建的な遺制を死守しているために、教育が劣化したのだ。ゆえに教員たちから自己決定権を取り上げ、上意下達の仕組みに切り替えることが教育改善のためには急務である」という説明にしがみついている。教育の「全面的な失敗」の責任は教育現場が行政の指導に従わないことにあって、行政側には何の瑕疵もない、そう言い張っている。もちろん、内心では「たいへんなことになった」と困惑しているのでしょうけれども、今さら「すみません」とは言えない。お役人は基本的に失敗を認めません。それで省庁の面子が保てると思っている。でも、そのせいで「失敗から学習する」という進歩と修正のための唯一つの道筋を自ら塞いでしまっている。

ですから、気鬱な予言になりますけれど、大学を含む日本の学校教育はこれから先ますます「落ち目」になってゆきます。V字回復の見込みはありません。もうすぐに18歳人口の急減によって、大学が次々と淘汰されて消えてゆきます。2017年度で大学を経営する660の学校法人のうち112法人(17%)が経営困難、21法人は2019年度中に経営破綻が見込まれています。みなさんがこれから進学しようとしている先は、そういう危機的状況にある領域なのです。
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(⑤につづく)

 

 

 

孫市