教育ドキュメンタリー映画『Most Likely to Succeed』~古い教育の起源:兵士を大量生産するシステム

以下、アメリカで製作された『Most Likely to Succeed』(新たな成功への道)という教育ドキュメンタリー映画の紹介記事(リンク)より一部転載
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 映画の冒頭で、主に二つのメッセージが伝えられる。

 まず第一に、せっかく受験を突破して大学を卒業したのに、低賃金しかもらえない中産階級の人々が激増しつつある事実。アメリカ全体の富は増え続けているにもかかわらず、まじめな中産階級の収入の下落傾向に歯止めがかからない。これは、第四次産業革命が原因で、暗記型・パターン思考で訓練された人々が、社会から必要とされなくなりつつある兆候だ。読み書き算盤(=パソコン)のスキルを身につけ、膨大な知識を暗記し、過去問のパターンを習得して受験を突破した人々の「血のにじむような努力の行く末」としては、あまりにも悲惨ではあるまいか。だが、それが、紛れもない現実なのだ。

 念のため言っておくと、日本はアメリカより10年遅れで社会変革が起きる傾向があると私は考えている。その「法則」からすると、受験地獄を突破して大学の卒業証書を手にした人々が日本社会から脱落し始めるのは、東京オリンピック後になると予測される。だから、アメリカの中産階級はすでに尻に火が付いているが、日本の大多数の人々は迫り来る破局にまだ気づいていない。

 もう一つのメッセージは、「古い教育の起源」だ。現在、あたりまえと思われている教育形式は、およそ200年前にプロシアプロイセン)で発明された。命令を忠実に実行できる、平均的な理解力のある兵士を大量生産し、屈強な軍隊を作るのが目的だった。結果的にプロシアはドイツを統一し、その後の世界史は、みなさんご存じのとおりだ。この教育メソッドの「利点」に気づいた資本家たちは、第一次・第二次産業革命で必要とされる「工場の従業員」と、ミスのない事務作業を実行する「会社員」を大量に養成するためにプロシア方式を採用することにした。それが、ここ120年ちょっとの世界の標準的な教育というわけだ。

 この教育の特徴をまとめてみよう。まず、均一な「教え方」を習得した教師を大量生産する。そして、効率よく何十人もの生徒が机を並べて学習できる教室のある校舎を建てる。それから、学年別、科目別の均一な教科書を作り、教師がそれを使って教えるための「あんちょこ」も整備する。教室には大きな黒板とチョークを置き、教師は教科書の内容を板書し、生徒は黙々とそれを写してドリルをやって暗記する。定期的に学力テストがおこなわれ、教科書の内容が暗記されているかどうかをチェックする。中学、高校、大学の入試システムを整備し、教科書に書いてあった「パターン」を一番忠実に再現できる能力を持った生徒だけが高い学歴を得て、一生、資本家の「番頭」として命令指揮をする……。

 要は、暗記を基本とした、長大なパターン学習であり、習得すべきスキルは全て国家が決めるのだ。

 だが、この教育システムの「成功者」たちは、エレクトロニクスとコンピュータに代表される第三次産業革命の中頃から、徐々に没落し始める。それが、受験を突破して有名大学を出ても、賃金が減り続けるというパラドックスなのだ。

 パラドックスといっても、その原因は明白だ。第三次から第四次産業革命の進行とともに、単純なパターンの仕事は高性能なソフトウェア、さらにはAIが代替するようになってゆく。ポンコツ自動機械と化した有名大卒の中産階級が習得したスキルは、もはや社会から必要とされなくなりつつある。

 ====================================================つづく

 

 

 

 


斎藤幸雄