教科書が読めない子どもたち

教科書が読めない子どもたち
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■大学入試でAIが人間を上回る

「ロボットは東大に入れるか?」というプロジェクト名を聞いて、どう思うだろうか? ロボットを東大に入れることを目的にしていると思うかもしれない。しかし、このプロジェクトを率いた国立情報学研究所の新井紀子氏が目指したのは、東大に入れることではなく、人間と比較し、AIの可能性と限界を明らかにすることだった。

約6年間の研究の結果、AIは東大には入れないが、偏差値57を超え、高校3年生の上位20%に相当する成績で、一部の有名私立大学に合格できるレベルにあることが分かった。しかしAIは、言葉の意味を理解して問題を解いているのではない。プロジェクトのために開発された「東ロボくん」というAIは、例えば小論文なら教科書とウィキペディアを検索し、文を取り出して組み合わせ最適化して書くだけだが、たいていの学生が書くものより質が高いという。なぜ文章を読んで理解できないAIが人間に勝てるのか? そう考えた時に新井氏はこう思った。「中高生は読めているのか?」。

■子どもたちの実態を知るために

そこで読解力を測るために新井氏らが開発したのが、リーディングスキルテスト(以下、RST)だ。2016年4月から17年7月末までに全国で2万5000人がこのテストを受検した(現在までの受検者数は4万人を超えている)。

問題は6タイプあり、「それ」「これ」など指示詞、省略された主語や目的語が何を指しているか判断する「照応」、主語や目的語がどれか判断する「係り受け」、論理と常識を用い与えられた文から推論する「推論」、定義を読んで具体的にどのようなコトやモノがその例になりうるか見分ける「具体例同定」、2つの文が同義であるか判断する「同義文判定」、文章に対応する図表を見分ける「イメージ同定」だ。中学・高校の教科書や辞書、新聞に掲載された文から問題を作成している。つまり、これが読めなければ、教科書も辞書も新聞も読めないことになる。

■多くの中学生が読めていなかった

▽「係り受け」の問題例
Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。
この文脈において、以下の文中の空欄に当てはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。Alexandraの愛称は(   )である。
①Alex ②Alexander ③男性 ④女性

答えは①。中学生の37・9%、高校生の64・6%が正解した。

▽「同義文判定」の問題例
幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。
上記の文が表す内容と以下の文が表す内容は同じか。「同じである」「異なる」のうちから答えなさい。
1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。

答えは「異なる」。中学生の57・4%、高校生の72・3%が正解した。2択の問題なら、さいころを転がして正解を選んでも正答率は50%だが、中学生はそれより少しマシなだけだった。

新井氏が目指しているのは、「中学1年生全員にRSTを無償で受けられるようにすること」、そして「中学卒業までに教科書をきちんと読めるようにすること」だ。

新井氏は2010年の著書『コンピュータが仕事を奪う』で、30年にはホワイトカラーの仕事の半分がAIに取られてしまうと予想した。いまの子どもたちが大人になった時に失業しないためには、意味を理解しないAIより劣るわけにはいかない。

「RSTができる子は『答えは問題に書いてあるし、簡単過ぎて何のテストか分からない』と言います。全然できない子は『いつもと違う問題だから分からなかった』とか『時間が全然足りなかった』と言う。中間層は「ひっかけ問題。考えすぎて間違えた」と言ったりする。全然ひっかけじゃないんですけれどもね。ただ、『ひっかけだ!』と反論したいのは、悔しいということでもあるでしょう。悔しければ、それが変わる最初の一歩になると思います。そこから間違えた原因について考えたり、別の問題にチャレンジしたりしてくれればいい。中学3年生がRSTで8割の正答率になれば、日本は2030年を無事に迎えられます。私が望んでいるのは、そうなってRSTが必要なくなることです。少なくなっている貴重な子どもたちがみんな読めて、自分の夢をかなえられるようになればいい」
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匿名希望