保護者も学校を変えられる。麹町中の学校改革①

学校にはなぜあるかよく分からない校則が多々存在する。
容姿・服装の制限、不純異性交遊、バイト禁止・・・etc.
校則だけに限った話ではなく、大人が設ける様々な制限によって子どもたちの思考・活動が制限されているわけだが、子どもたち自身が、そして時には親が、学校改革に踏み切る事例が近年増えている。
千代田区にある麹町中学校は、PTAが改革の起爆材となった、そんな事例の一つである。

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麹町中学校校長の工藤勇一氏と保護者が活発に意見交換を行う「The 麹中座談会」。こうした場を企画しているのは同校のPTAだ。しかし当初から多くの保護者が足を運び、白熱した議論が行われていたわけではない。現在のような姿に至るまでには、工藤氏の進める学校改革に賛同し、保護者自身もPTAのあり方を見直してアクションを続けてきた経緯がある。PTA役員として、その中心にいた当事者に話を聞いた。

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●PTA活動をいかに軽くするか

 就学中の子を持ち、現在進行形で学校と関わっている人の中には、「PTA役員になる」ことにネガティブな印象を持つ向きもあるかもしれない。あるいはPTAの存在意義が見えず、「会費を払うことさえばかばかしい」と感じている人もいるのではないだろうか。

「僕自身も、当初はPTAのあり方を残念に思うことがありました」

 そう話すのは、次男が入学した2015(平成27)年度から3年間にわたり麹町中学校のPTA会長を務めた木村雅俊氏だ。

「工藤校長と僕に共通していたのは、『形式張ったことが嫌い』という点でした。だから、目的がよく分からないことを一から見直していったんです。委員会などの集まりでは、お菓子やお茶を用意して配るような仕事は減らしていく。PTAから保護者に向けた書類では、時候のあいさつよりも、大切な『テーマ、日時、場所』を大きく伝えることに主眼を置く。そんなふうに少しずつPTAのあり方を変えていきました」

 木村会長のほか、3名の副会長が軸となり、「何よりも生徒のために」という思いで活動を展開していったという。最初に行ったのは前述のように「PTA活動を軽くすること」だった。煩雑な決まりごとに縛られ続けていては、活動に参加する保護者の負担を減らすことはできない。また、単年度ごとに役員が入れ替わることも多いため、しっかりと情報を引き継ぐ必要もあると考えた。

「委員会ごとにPTA活動を円滑に進めるため、単なるマニュアルではなく、『今年はこんなことがあった。来年はこう改善したほうがいい』という、次年度に向けた改善引き継ぎ事項を書面に残すようお願いしたのです」

●「子どもがやりたいことを尊重してあげるのが一番」

 一連のPTA改革を通じ、工藤氏の改革を知ることで、活動に関わる役員の意識も変わっていった。2017年度から1年生保護者を代表する副会長となった上村実代氏もその一人だ。

「息子は、自由で風通しの良い校風をとても気に入っています。新しくできた購買局にも参加し、『僕たちが購買部の運営を任されている』とうれしそうに活動しています。私も1年間いろいろな行事を見てきました。演劇会に触れて役者を目指そうとする子がいたり、起業家の講演を聞いてビジネスに興味を持つ子がいたり。学校という場は、将来に向けてさまざまな可能性を見いだせるところだと改めて思うようになりました」

 しかし一方で、「もしかしたら、この環境に馴染みきれない子もいるのではないか」とも感じる。そこで、少しでも悩んでいる生徒がいないか、子どもたちの何気ない会話にも耳を傾けるようにしている。

 2年生の娘を持ち、同じく副会長を務める菱沼かや氏は、現在の麹町中学校の教育方針を「子どもたちが『自分の人生は自分のものだ』と考えるきっかけを与えてくれている」と評価する。

「大手企業に就職すれば一生面倒を見てもらえる時代もありました。でも今は『自分』がなければ、どこに行っても、何をしても乗り越えていけない時代です。それを工藤校長が繰り返し語ってくれたおかげで、私自身、子どもに『何がしたい?』と問いかけるようになりました。親としては、大きな一歩を踏み出せた感じがしています」

 3年生の娘を持つ副会長の木村由香氏は、上の子にあたる次男が同校へ通っていた2014年度に工藤氏と出会った。実は昨年、高校卒業を控える次男の進路について工藤氏へ相談している。

「親としては大学受験をしてほしいと思っていましたが、本人は小学校の頃から『料理人になりたい』という夢を持っていました。それで、どうしたらよいか工藤校長に相談したんです」

 工藤氏から返ってきた答えは明快だった。「親は最後まで子どもの面倒を見てあげられるわけではない。だから、子どもがやりたいことを尊重してあげるのが一番ですよ」。その言葉で踏ん切りがつき、次男が調理専門学校に進むことを応援するようになった。

「子どもがやりたいと思うことを尊重し、背中を押してあげられたのは、PTA役員として工藤校長と接する時間が長かったからだと思います。これは子どもとの関わりだけでなく、PTA活動にも生かされました。工藤校長から教わった考え方を保護者の皆さんに伝えることが私の役目になっていました」

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②へ続く

 

 

 

 

二郎板