日本一若い校長 札幌新陽高校の挑戦

日本初の「探究コース」をつくった札幌新陽高校の荒井校長。
リクルートソフトバンク、そして公益財団法人東日本大震災復興支援財団専務理事を歴任した異色の経歴をいかして、祖父の創立した学校を立て直すべく、変革を続けている。
2018年4月からは、脱偏差値、イノベーションを起こして価値を創造する人を育てる日本発の「探究コース」を設立。

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(中略)
 
2016年2月1日、優氏は「覚悟を決めて」校長に就任する。同校のかつてのイメージは、パンチパーマにチェーンを振り回す女子高生というもので、今でも学校に対する風評は良くない。優氏が初めて学校に行くと、こうした風評と違い生徒たちは素直でピュア、世間で言うほどひどくないことを実感した。

優氏は、生徒たちの意見を聞き、本気でやろうとしていることにはその環境を整えるとともに同校の実態を広く世間に知ってもらうように努力した。
校長就任後、10月から12月にかけて多くの中学3年生と保護者に向けて講演、その年のオープンスクールには400人の中3生と保護者が出席した。
何のために高校があるのか、新陽高校の取り組みを説明した結果、17年4月は322人と定員を15%上回る新入生を受け入れることができた。前年の5クラスから9クラスに増え、経営的にもより安定する水準になった。

 17年4月に入学した1年生は322人。荒井優校長は、さっそく行動する。「1年生全員でYOSAKOIソーラン祭りに出場しよう」。職員会議に諮ると反対の声が相次いだ。「祭りは6月半ば。2ヵ月で踊りを覚えられるわけがない」、「2年生になってからでも十分ではないか」――そんな声を押し切って優氏は「まずやってみよう。新しい新陽高校の伝統を創ることにチャレンジしよう」と反対する先生たちを説得した。

(中略)

多くの市民や観光客が見守る晴れ舞台で、1年生たちは踊り切った。笑顔が溢れ、誇らしげな顔つき。「これを新1年生の恒例行事にしよう」。優氏はその時誓った。高校生の1学年全員がYOSAKOIソーラン祭りに参加することなど前代未聞。踊りを見ていた北海道教育委員会の委員は「これぞ体育祭の原点」と称賛したという。

改革は続く。アウトドア用品のメーカーでアウトドアライフを提案するスノーピーク(本社・新潟県三条市)と提携、来年から野外で教科書を使わない授業を取り入れる。「普通の授業の時間割で進め、学校そのものを再定義するような内容にしたい」と優氏は語る。

また、プロバスケットボールチームのレバンガ北海道とのコラボも始まった。優氏がレバンガの折茂武彦選手兼オーナーに直談判。レバンガの選手が新陽高校バスケットボール部の外部コーチとして指導する代わりに、部員がレバンガの試合でモッパー(コートにモップを掛ける役目)を務めることになった。

(中略)

さらに来年4月から国内初の「探求コース」を導入する。偏差値ではなく経験値を重視する、新しい価値感の学校を創るための先導役となるコースで、人間関係の質を高めることに重点を置く。このため、スぺインでプロサッカー選手を経験して奈良市で教師をしていた中原健聡氏(30)を「校長の右腕」という役職で招聘した。

優氏は言う。「探求コースはこれからの日本の教育のデファクトスタンダード(事実上の標準)になるだろう。こうしたコースを設置するのに公立高校なら10年はかかる。ソフトバンク時代に培ったベンチャーマインドで教育分野に民のチャレンジシップをどんどん導入したい」

 

 

 

 

大森久蔵