日本の生産性を引き下げている「文章を読めない人」(2/2)

yahooニュース リンク より、以下転載 つづき
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 言語によって、脳内における情報処理のアルゴリズムが異なるという研究事例もあり、そうなってくると、他の言語圏との比較も必要になってしまう(ちなみに山口氏は米国人とのやり取りではそうした行き違いは生じにくいとも主張している)。

 ここまでくるとテーマが壮大になりすぎてしまうのだが、実務的には2つのアプローチがあると筆者は考えている。

 1つは可能な限り、口頭ではなく文書でのコミュニケーションを実施するよう心がけ、このやり方に社会全体として慣れていくというもの。もう1つは、表現や表記の方法を体系化し、可能な限り分かりやすくするというものである。

 日本では以前からテレワークなど遠隔で勤務できる環境整備が必要と指摘されてきたが、一向に導入は進んでいない。その理由は技術的なものではなく、メンタルなものである可能性が高い。

 日本の職場では、業務の指示や責任の範囲が不明瞭なことが多く、チーム全員が顔を合わせて、状況を逐一確認していかないと仕事が進まない。確かに、表情やしぐさなど、ビジュアルな情報があれば、言語が不明瞭でも意思の疎通は可能だろう。しかし、こうしたスタイルにばかり慣れてしまうと、文書を読み書きする能力が高まらないのは当然である。

 働き方改革が社会全体の課題になっていることも考え合わせると、業務の指示や責任の範囲を文書で明文化する努力が必要なのは明らかであり、これを実践すれば、文章の読解力は確実に向上する。

■ 情報の整理、表現の工夫でも改善は可能

 こうした試みとは表裏一体の関係だが、多くの人に明瞭に意図を伝えるためのテクニックも必要だろう。筆者は職業柄、日米の経済統計をWebサイトで閲覧することが多いのだが、両国のWebサイトには驚くべき差がある。

 米国のサイトの方が英語という外国語であるにもかかわらず、内容が直感的に理解できるのだ(参考までに、筆者は外国に住んだ経験はなく、ごく一般的な英語力しかないので、英語の基礎力が高いことで内容が容易に理解できているわけではない)。

 日本のサイトは、統計データと関連するおびただしい注記事項が羅列してあるだけというケースが多く、情報が整理されていない。様々な立場の人が読むことをまったく想定していないのだ(あるいは想定していても、体系立てて表記できないのかもしれない)。

 困ったことに、こうした分かりにくい情報に対して改善の要求が出されるのではなく、詳細を知っている人が、分かりにくさを利用して、分からない人に対して優越的な立場に立つという、本末転倒な現象も散見される。あなたの職場にも、分かりにくい情報しか提示できないにもかかわらず、「こんなことも知らないのか」と悦に入る同僚がいないだろうか。

 多くの人にとって分かりにくい情報しか出せない人は、マイナス評価になるという土壌が出来上がれば、読解力不足の問題もある程度、緩和できるだろう。

 分かりやすい表現を重視すると、薄っぺらい議論になってしまうとの批判もあるが、筆者はそうは思わない。

 難しい話を難しく説明することなど、専門家であれば誰でもできる。現代社会はオープン化が進んでおり、異なる分野の知見をうまくミックスしていかなければ新しいビジネス領域を開拓することはできない。専門的な内容を専門外の人に適切に説明する能力に欠ける人は、むしろ専門家としての能力が不足していると評価するぐらいの意識改革が必要である。

 こうした実務的な改善を積み重ねて行けば、教育プログラムによって読解力を向上させるといった大きな枠組みを構築しなくても、たいていの問題は解決するはずだ。
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山上勝義