私大への助成金で歪められる日本の教育現場

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日本大学アメリカンフットボール部の悪質タックル問題でクローズアップされた話題の1つに、政府から交付される学校法人への補助金がある。私立大学助成金、いわゆる「私学助成金」だ。

■「私学助成金」とは

私学助成金は、私立の大学や短期大学、高等専門学校に各学校の教職員数や学生の数などによって毎年交付される。その総額は2017年度で3168億円にも達する。私学助成金などの教育機関に対する補助金はどんな仕組みになっているのか。また、その交付基準とはなにか。

現在、日本にはざっと780校(2017年度)の大学がある。そのうち私立大学は604校。その大半は政府から私学助成金=「私立大学等経常費補助金」を交付されている。この経常費補助金は、施設整備費補助、研究設備整備費等補助、教育研究活性化設備整備費補助といった名目だが、大きく分けて「一般補助」と「特別補助」の2種類になる。

2017年度の交付学校数は、短期大学や高等専門学校なども合わせると873校(出所:日本私立学校振興・共済事業団、以下同)で、一般補助=2688億円、特別補助=479億円。1校あたりの平均は大学で5億1371万円、短期大学は7426万円、高等専門学校1億4220万円となる。

これを1人当たりの平均に換算すると大学が15万5000円、短期大学18万3000円、高等専門学校19万6000円となる。私立大学に通っている人は、毎年平均で15万円程度の補助金を受けて学生生活を送っている。

大学別に補助金額の多い上位ランキングを紹介しよう。
早稲田大学……92億4079万円
日本大学……91億5481万円
③慶応大学……90億3456万円
東海大学……62億8399万円
立命館大学……60億1353万円
 
国立大学などの「運営費交付金」を見てみると、国立大学法人(4研究機関含む90法人)でざっと1兆0970億円(2017年度予算額、以下同)になる。そのベスト5を見ると次のようになる(同)。

東京大学……824億円
京都大学……543億円
東北大学……463億円
大阪大学……441億円
九州大学……409億円
 
5校合計で2680億円に達する。

私学助成金そのものは、このところ継続して一定の伸び率にとどまっており、今では大学の経費に対する補助割合は全体で10%程度に留まっている。かつては3割近かったのだが、いまや大学の収入の1割が補助金という状態になっている。

ちなみに特別補助も、近年は減少傾向にあり、財政面でのやりくりに苦慮している日本を象徴していると言っていい。


■経営のトップが出てこない背景には…

一連の日大アメフト部の問題において、当該選手だけでなく監督やコーチ、学長までが会見を開いたが、最後まで会見に姿を見せていないのは日大の田中英壽理事長だ。学校をビジネスと考えれば、経営のトップ=理事長が出てこないのは、やはり違和感がある。

その背景には巨額の助成金補助金があるように思えてならない。確かに、日大の危機管理のなさは目立ったが、その一方で90億円を超える私学助成金を受け取っている日大としては、そうそう軽々しく自分の非を認めるわけにはいかない事情がありそうだ。

たとえば、私学助成金を受け取るには一定の条件がある。「法令違反等」や「財政状況」によっては補助金甲府が打ち切りになる、あるいは減額されるケースがあるからだ。こうした背景をメディアがきちんと伝えたかどうかはやや疑問が残る。

■私立大学に押し寄せる「2018年問題」

全国に600校余りある私立大学には、「2018年問題」という大波が押し寄せようとしている。

大学の「主要顧客」である18歳人口は、ピーク時の1992年に200万人を超えていたが、その後減少に転じ、2017年のそれは120万人へ4割減少した。2000年代後半に減少ペースはいったん鈍ったが、2031年には100万人を切る。「2018年問題」とは、18歳人口の減少スピードが2018年に再び加速することにより、私立大学の経営を大きく直撃するという問題を指す。

実際に大学や大学院の将来像を議論する中央教育審議会、いわゆる「中教審」もこの秋を目処に、国立大学法人が複数の大学を経営できる仕組みなど、少子化の進展に対応するための将来構想を文部大臣に答申すると言われる。

その中には経営悪化の私立大学に対して、早期の撤退を促す目的で学部や学科単位の「譲渡」を可能にする、あるいは他の大学や企業、自治体と密接な連携ができる体制を作るなど、大学や大学院の在り方について議論が交わされている。
そんな議論に関連して、最近になってクローズアップされているのが、大学の定員割れの問題だ。

補助金を受けている私立大学の40%は、5年連続で定員割れに陥っていると言われている。2018年度からは、定員割れしている私立大学に対して補助金を減額する方向に動いており、場合によっては補助金の打ち切りも検討するとされている。大学ビジネスも、いよいよ人口減少の影響をまともに受けつつある、ということだ。


ちなみに2017年秋に、東京23区の大学の定員を抑制する文部科学省告示が交付されたが、地方大学の定員割れを防ぐために、人が集まりやすい東京の大学の定員数を制限するのは、あまりに安直な政策と言わざるをえない。定員割れの大学の活性化に繋がるとは到底思えない。

■大学を減らす仕組みを作るほうが建設的だ

人気のない大学を減らす仕組みを作ることのほうが、今後の人口減少社会を考えたとき、はるかに建設的と言える。

そもそも、私立大学という私的な組織に多額の税金が使われていることには、以前から憲法89条の「税金を私的企業や団体に交付することを禁止する規定」に違反しているのではないかという指摘があった。教育機関だから特別扱いすることで、これまでスルーされてきたのだが、国際的に低いランクに甘んじている日本の大学の現状を考えると、助成金制度が功を奏しているとも思えない。
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