変わりゆく時代に求められる学校の役割

全ての教育者のためのメディア。REA『学校不要論③リンク』)より引用します。

それは、大きく分けて次の2つであると考えています。

1.学びに動機と目的を与えること
2.ともに学びたいと思う環境を提供すること

「学校不要論②~学校教育の価値と課題~」で用いた歴史の例でゆくと、学習者は幕末の日本や世界の歴史について学ぶことへの目的を持っています。「なぜ日本の開国を強力にはたらきかけた国は米国だったのか?」という問いに対する自分の答えを見つけるという目的です。さらに、幕末の外交関係がその後の歴史や現在の各国との関係に大きく影響していることを示唆することで、学びのインセンティブに火をつける工夫とすることができます。これが、「1.学びに動機と目的を与えること」の役割を満たしています。 

学びには環境も非常に重要です。ここでいう環境には、ピアの学習者も教師も含まれます。問いに対する各々の答えを教室内でグループを組ませてシェアさせれば、学習者たちはお互いの考えに刺戟を得てさらに学びを深めていきます。

また、行き詰っている学習者に対しては、教師は適切な助言や手がかりの提示を行うことで学習者の主体的な学びを誘発することができます。成果物(ここでは「なぜ日本の開国を強力にはたらきかけた国は米国だったのか?」という問いに対する各々の答えの発表)へフィードバックを行うことも重要な教師の役目になるでしょう。

このように、学びの動機や、ともに考えをぶつけながら学び合える仲間、学びを推し進めてくれる教師の存在は、学校へ実際に足を運ぶ大きな理由になります。授業を設計する際は、わざわざ学校に来て参加する必要がある授業がつくれているかということを常に自問し続けてゆく必要があります。

私が大阪大学で行っている英語の実践授業「REALプログラム」では、授業ごとにひとつのテーマ・クエッションを設定し、その問いに対する自分なりの答えや解決策を練り上げ、英語で他の学習者とシェアすることを授業の着地点にして設計していることは先に「学習者から見た目標設定の重要性と具体例」で述べました。これは、今後の教育の担うべき役割を反映させたものになっています。

まず、問いの設定は「1.学びに動機と目的を与えること」の項目に即しています。問いの設定によって、学習者はなにを目的に学ぶのかという明確な目的意識を得ることができます。かつ、その問いを学習者にとってより意義深いものにすることで、学習者は学ぶ動機を得ることもできます。

たとえば「農業危機をどう回避するか?」という問いで授業を行った際は、現在の食料生産事情に至った戦後以降の歴史的な背景や、中国や米国などで特に深刻な土壌破壊・流出の現状を英語でインプットする活動を組み込みましたが、学習者たちはこのインプット学習は授業のゴールである「農業危機をどう回避するかという問いに対する自分の答えをつくりあげること」に対して必要なインプットであることがわかっているので、十分なインセンティブを持って学習に臨むことができます。また、この問いを各々の健康や人類社会の存続とも紐付けて提示することで、学ぶことの必要性を実感させることができます。これは、学習への動機づけという役割に即した工夫です。

また、REALプログラムの授業では、教育の役割の2つ目「2.ともに学びたいと思う環境を提供すること」も十分に満たすような設計を心がけています。

授業内で行うインプット学習の多くには、ペアやグループで行うアウトプット活動を付随させています。たとえばリーディングは内容量が同程度の英文を2つ用意し、ペアで別々のものを読ませたのちに2人で読んだ内容をそれぞれ共有させます。この活動では、読解は自分のためだけではなく、自分の持ち帰った情報を待っているペアのためでもあります。お互いがお互いの学びのために、学生たちは真剣な眼差しでインプット学習に励んでいます。

また、問いに対する各々の答えは、授業の最後にミニ・プレゼンテーションという形で3,4人のグループ内で発表させます。このとき、プレゼンター以外のグループ内のすべての参加者に役割を与えられています。プレゼンター、プレゼンターの話を要約して繰り返す人、プレゼンターにフィードバックを書く人…等、お互いの考えを共有して学び合うだけでなく、相手のプレゼンテーションをよく聞いて内容を再生産したりフィードバックさせ合ったりする「相手のために行う活動」を組み込むことで、より「ともに学びたいと思える」環境がつくられるよう工夫しています。

~・後略・~

 

 

 

 

村田頼哉