ランドセル巨大化と「学力低下」の意外な関係

東洋経済オンライン(yahoo news)
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より引用です。

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■ここまできたランドセルの巨大化、重量化
  近所の大型スーパーに行ったら、ランドセルがたくさん並んでいました。来年度の新1年生用ランドセルの販売がもう始まっているのです。

  驚くのがその大きさです。思わず「でかい!」と言いそうになりました。教科書が大きくなって、しかも厚くなったので、以前より巨大化しているのです。

  かわいそうなのは、子どもです。ランドセル自体の重量も増したうえに、重い教科書をたくさん入れて、毎日登下校するのです。低学年で体の小さい子はたいへんです。でも、学年が上がっても楽になるわけではありません。なぜなら、学年が上がれば上がるほど持ち物が増えるからです。
 
 教科書やノートだけではない、漢字ドリルや計算ドリルもランドセルに入れなければなりません。理科や社会がある日は、教科書とノート以外に資料集が必要になるかもしれません。そして、これが教科書と同じくらいの重さがあります。国語では、音読資料集も必要になるかもしれません。6時間目まで授業がある日は、どれだけ多くなることやら。給食セットや筆箱は毎日持ち運ばなければなりませんし、体育着、習字用具、絵の具セット、鍵盤ハーモニカなどが必要な日もあるでしょう。

 まず心配になるのは体への悪影響です。成長中の子どもたちが、毎日の登下校で重いランドセルを背負い続けるのです。悪影響がないはずがありません。背骨への影響も心配ですし、姿勢が悪くなる可能性もあるでしょう。心理面においても、重い荷物が子どもに与えるストレスは軽く見るべきではありません。私たち大人でも、毎日の出勤で重い荷物を運ぶのは相当なストレスです。荷物が重いことで登校を苦痛に感じる子も出てくるでしょう。それが不登校の引き金を引く可能性もあります。

(中略)

■そもそも「巨大化」した経緯に問題がある

(中略)

  具体的には、次の2つの勘違いによって、子どもたちのランドセルが巨大化したのです。
 
 「教科書を厚くして教える内容を増やせば学力が上がるだろう」「授業時間を増やせば学力が上がるだろう」

  この2つの勘違いから抜け出さなければ、根本的な解決にはなりません。はっきり言いますが、教科書を厚くして教える内容を増やしても、授業時間数を増やしても、子どもたちの学力は上がりません。なぜなら、日本は小学1年生(35人学級)を除いて、長年にわたって40人学級のままだからです。1人の先生が最大40人の子どもたちに一斉授業をするのです。先進国でこれほど大人数の一斉授業をしているのは日本だけなのですが、この事実はあまり知られていません。
 
 公立小・中学校の子どもたちの学力差は非常に大きいです。一を聞いて十を知る子もいれば、その逆の子もいます。授業が始まる前からすべて完璧に理解している子もいれば、いくら教えても理解できない子もいます。そして、学年が上がれば上がるほど、学力差は大きくなります。特に算数・数学と理科においては、どうしようもないほど大きくなります。私も教師だったとき、小学5、6年生の算数や理科の授業ではいつも苦労しました。
 
(中略)

  実に幅広い子どもたちが、同じクラスで同じ時間に同じ内容の授業を受けるのです。それが一斉授業というものです。長年小学校の教壇に立ってきた経験をもとに言わせてもらえば、小学校の先生たちは、ほとんどの場合、中の下くらいのレベルに合わせて授業をします。あまりレベルを上げすぎると、ついてこられない子が多くなります。かといって、レベルを下げすぎると、いつまでたっても次に進めず、1年で教科書の内容を終わることができなくなります。

しかしながら、中の下くらいに合わせても、それより学力が低い子たちはついてこられません。ですから、その子たちには個別指導が必要になります。ところが、個別指導をしたいと思っても、授業中に他の子たちはほったらかしにして、個別指導することはできません。休み時間に個別指導すればいいと思う人もいるかもしれませんが、実際には不可能です。というのも、そういう子たちは休み時間が楽しみで生きがいということが多いからです。休み時間や給食時間に友達とおしゃべりできるのが楽しみで、そのために学校にきている子も多いのです。その楽しみまで奪って個別指導するのは難しいことです。
 
 それに、個別指導してそれでついてこられるようになるというならともかく、ほとんどの場合そんなに簡単な話ではありません。このようなわけで、教科書を厚くして教える内容を増やし、授業時間数を増やしても、大人数の一斉授業のままではその子たちはわからないまま座っている時間が増えるだけなのです。

■日本は1学級あたりの人数が多すぎる

 では、どうすればいいのでしょうか?  いちばん効果があるのはやはり少人数学級の実現です。本気で教育改革をしようと思ったら、これを避けて通ることはできません。少人数学級の効果についてはすでにいろいろな研究がなされていますが、特に有名なのが、コロラド大学のグラス教授とスミス教授の研究で明らかになったグラス・スミス曲線です。これは50年間にわたって約300校を調査し、学級規模と学力の関係を統計学的に分析し、グラフ上に曲線として表したものです。
 
それによると、次のようなことが明らかになっています。

学級規模が小さくなるほど学習の達成度が上がる。つまり、40人学級より30人学級、30人学級より20人学級の方が学力が上がる

 児童生徒の情緒面の安定についても、小規模学級の方が効果が大きい。つまり、40人学級より30人学級、30人学級より20人学級の方が情緒の安定度が高くなる(出所:最新教育データブック、時事通信社)

 日本においても上智大学の加藤幸次教授らによる「学習集団の規模とその教育効果についての研究」があります。それによると、「小学校にあっては、すべての教科において、20人学級は30人学級より、30人学級は40人学級より学習の効果が高い(素点)ことがわかった。」ということです。

 

 

 

 

時田 弘