高校生19人に1人は「通信制」 少子化時代に生徒増のわけは?

高校生19人に1人は「通信制少子化時代に生徒増のわけは?
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少年はリュックからiPad Proを取り出し、自分の「通う」高校を見せてくれた。画面には「国語表現」の授業メニューが並び、それぞれに「完了」マークが付いている。動画を見て、テストに答え、仕上げにレポートを提出する。「ネットの高校」をうたう通信制の「N高校」の授業だ。授業やホームルームはインターネット上でほぼ完結でき、空いた時間は好きなことに使う。そんな「自由」にひかれ、幼なじみ2人とここを進学先に選んだという。彼だけではない。N高校だけでもない。少子化が進む中、通信制高校は増加傾向にあり、実に19人に1人が「通信制」を選ぶ時代になっている。(笹島康仁/Yahoo!ニュース 特集編集部)

(中略)

■開校2年、生徒数4790人
教員約40人のN高校(定員1万人)にはこの1月末現在、4790人の生徒が在籍している。このうち約千人は17年度の途中で入学した生徒だ。週1~5日はキャンパスや提携校に通う「通学コース」の生徒は4分の1。いまは東京と大阪にあるキャンパス(定員計520人)に加え、この春からは福岡や名古屋など6カ所(定員計1400人)にキャンパスを新設するという。

「本校」は沖縄県伊計島にある。昨年9月に開かれた説明会には、約50人の親子が足を運んだ。奥平博一校長はその席で「子どもの悪いとこに目が行ってませんか?」と語り掛けた。「英語はいいけど、数学は……とか。でも、得意を伸ばせばいい。英語を伸ばせばいいんです。これからの社会では、平均点だけの人間では役に立たないんです」と。

(中略)

■「高校、行かなくていいよ」
説明会に来ていた沖縄市の砂川瑠威さん(17)は、中学にほとんど行っていない。高校進学を前に、母の紋乃さん(35)は「行きたくないなら、高校には行かなくてもいい」と告げたという。

「(娘は)絵や小説が好きだから、まず、良いところを伸ばしてほしいと思ったんです。心がつぶれる前に。でも、やっぱり高校は行ってほしかった。最近、そんな瑠威にN高のことを教えたら、初めて『行きたい』と言ったんですよ」

紋乃さんが続ける。

「私は、めちゃめちゃ世間体の母親だったんですね。学校は行くもんだ、って。学校まで瑠威を引きずったこともありました。でも、戻ってきちゃう。そのうち、全然しゃべらなくなっちゃった。あれが一番効いたな……。それで、コミュニケーションを取ろうと思ったら、気付いたんです。ああ、私はこの子の気持ちを無視してたって。学校に行かせるより、この子を守ることが大事。だから、無理に行かせない代わりに、行きたい方向が見つかるよう、働きかけ続けることにしたんです」

砂川さん親子はこの説明会後、すぐに入学を決めたという。

■「通信制」の割合、30年で倍に
文部科学省の学校基本調査によると、通信制高校の生徒は、2017年度に18万2515人を数え、高校生全体(約346万人)の5.3%を占めた。19人に1人が通信制を選んでいる計算だ。1990年度は高校生全体(約579万人)のうち2.7%(15万3983人)だったから、およそ3万人増えたことになる。

近年は私立の通信制の新設が目立ち、全体の学校数は増え続けている。1998年度に初めて100校に達すると、その後も三つ以上の都道府県から生徒が入学できる「広域通信制」の高校を中心に急増。03年度からは学校法人だけでなく、株式会社も学校を設置できるようになり、17年度には全国で250校を数えた。

こうした中、通信制課程のある私立高校をめぐっては、問題が後を絶たない。

(中略)

それでも通信制の人気は衰えていない。なぜだろう。瑠威さんはこう話す。

「(通信制が増えているのは)好きなことをやりながら、好きな時間に勉強できるからじゃないですか? やる気が出た時にやるから、授業も面白い。(全日制の)学校に行くと、放課後しか自由な時間がない。私は普通の学校に行ったら、中退してたと思います」

(中略)

■「将来を考えている子が多いです」
通信制高校の生徒が増える大きな理由には、やはり「不登校」がある。文科省によれば、年間30日以上欠席した児童生徒の中で「不登校」とされる小中学生は16年度に13万4398人を数えた。千人当たりでは小学校で4.8人、中学校で30.1人となり、いずれも過去最高だ。

それでも不登校経験者の8割強は高校に進学する。その有力な受け皿が通信制定時制であり、中央教育審議会も16年の答申で「学び直しの機会提供」への期待を記している。

そうした生徒たちを支援するNPO法人「D×P」(ディーピー、大阪市)の今井紀明さんは「通信制に通う生徒はこれからも増える」と感じている。

「子どもたちは賢いと思うんです。社会の変化に敏感です。『プログラミングをやりたいのに、全日制の学校に通う意味が分かんなくなっちゃった』と言って、通信制編入した生徒もいました。自分で仮想通貨を運用する子ども、ファッションで稼ごうとしている子どももいる。起業意識も高い。将来をちゃんと考えている子は多いんです。けれど、一方では通信制には不登校経験者も多く、卒業後の進路未決定率も高い。卒業しても、自立できず、ニートになったり……」

D×Pは、通信制定時制の生徒と社会人らが体験を語り合うプログラムを提供している。信頼できる大人との関係をどう築くか。それが大切だと考えているからだ。

「今の日本では、しんどい子ほど孤立してるんです。いじめを受けたり、親から傷つけられたり、先生と揉めたり。こうして頼れる人がいない子たちが孤立しています。そこから自分の力だけで生きられる確率って何パーセントあるんでしょうか? 生徒の自己責任だとは思えません。さまざまな経験をしている子たちだからこその可能性もあると思っています」

 

 

 

紀伊谷高那