高卒求人バブル到来、売り手市場のうちに

高校生に対する求人が急増中だ。進学か、就職か──。空前の売り手市場に、高校の進路現場で異変が起きている。奨学金が社会問題化する中、確かな選択に頭を悩ませている。

2017年3月卒の求人数は6年連続の増加となる約38万7千人。高卒の求人倍率は2.23倍と、大卒の1.74倍(17年3月卒・ワークス大卒求人倍率調査)を大きく上回る。進学者の多い都市部の求人倍率は高騰し、東京都では6.93倍、大阪府では3.46倍に達する。今年は昨年を上回る売り手市場になりそうだ。

●高校生のほうが素直
背景にあるのは、景気回復に伴う人手不足だ。これまで大卒をターゲットにしていた企業でも、なかなか大卒が採れず、高卒にシフトしているという。

高卒新卒採用の就職求人サイト「ハリケンナビ」を運営するハリアー研究所の新留英二代表取締役は、「製造業大手が農業高校に求人票を出すほど、人材の奪い合いが激化している」と指摘し、高校生に対する企業の見方に変化が出ていると話す。

「高卒求人に多い製造業や建設業を始め、飲食業、介護、福祉と、業種を問わず求人数が増えるなか、以前はなかった営業などのホワイトカラー職の求人も目立ち始めた。ある一定レベル以下の大学生を採用するなら、高校生のほうが素直で、一から育てたほうがいいと評価する声も中小企業を中心に出始めた」

東京五輪以降は先行き不透明
「高卒就職は職場見学や応募書類の作成も学校がすべてサポートする。大卒就職も売り手市場だがコミュニケーション力の有無で内定をとる人と、そうでない人に二極化。確実に就職するには高卒就職のほうがたやすい」(黒沢理事長)

都立青井高校(足立区)は生徒の約3割が就職の道を選ぶ。進路担当の浦部ひとみ教諭は、現場の状況をこう口にした。

「進学を選べば就職活動をするのは東京五輪以降。今のような売り手市場とは限らない」

不登校や高校中退者らが目標を見つけ、それに向かって挑戦することを目的に東京都が設置した「チャレンジスクール」の一つ、都立稔ケ丘高校(中野区)では、高卒求人の急増と共に就職者の割合が増え、昨年は全体の9%に。疋田誠教諭は言う。

「まだ自信を完全に回復しておらず、明確な進路希望がない生徒には、就職も考えたらと話すことがあります。4年後に上位の大学生と同じ土俵で就職活動をすることを考えると、求人に恵まれた今の間に就職させたほうがいいという思いもある」

●大学中退は高卒以下
「16年3月から企業には求人票に、直近3事業年度の離職者数や平均勤続年数などの情報の記載も義務付けられている。安易に高卒採用に走る企業もあるが、『定着』を意識する企業が高卒採用に成功している」

駐車場の運営などを行う日本駐車場開発大阪市)は今春入社の高卒社員から、大学進学を支援する給付型奨学金制度を導入した。入社後3年間、一定水準の評価を得た大学進学希望者に対し、入学金と3年間の授業料を給付する。橋本奈津子人事総務部長は、こう話す。

「年齢、性別、国籍、学歴は関係ないというのが当社の考え方だが、経済的な理由で勉強する機会が奪われたケースもある。機会を提供することで、幅広く人材を採用する狙いもある」

安易な就職は避けたいが、それは進学も同じこと。労働政策研究・研修機構が東京都在住の20代を対象にした調査によれば、大学中退者(専門学校含む)の就職状況は「一貫して非正規雇用」が最多の約5割だ。

「現在でも一度就職して学費をため、進学する生徒はいる。働いてみて、初めて自分の求めることがわかることもある」

都立第四商業高校の高石公一校長は、そんな生き方も提案した。

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柴田英明