学びのしくみ~子どもの言語学習から学ぶ(2)~胎内で始まる言語学習

今井むつみ氏の著書に「学びのしくみ」の続きです。
学習の本質が書かれています。

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「胎内で学ぶ母語のリズム」
言語の学習は胎内ですでに始まる。胎児は羊水の中にいる。
水の中では一つひとつの細かい音はよく聴こえない。しかし、リズムは水中でもわかる。胎児は母語のリズムや音の強弱のパターンを聴き、母語の律韻のパターンを学習する。言語の特徴がもっともわかりやすいのは韻律(リズムと音の強弱や高低)だ。聴こえている言語が何を言っているかまったくわからなくても中国語か、フランス語か、イタリア語かはなんとなく感じでわかる。胎児の場合も同じだ。母親の胎内で、その環境でできる言語の学びをすでに始めている。生まれたばかりでも、乳児は韻律を頼りに自分の母語をそれ以外の言語と区別することができる。つまり厳密には、赤ちゃんは自分の母語の韻律の特徴についての知識とともにこの世界に登場するのである。

「単語をつくる音を探す」
言語のパーツは単語だ。単語を規則(文法)に則って組み立て、文を作る。単語を組み合わせることで、言いたい事を何でも表現する事ができる。
そのためには、たくさんの単語を知っていなければならない。しかし、耳にする言語の音は、単語ごとに区切られていない。知らない言語を聞いたとき、まずきれめなく流れてくる音を単語に区切ることができ、ぞれぞれの単語の意味を知っていなければ、何を言っているのか理解できない。
人が何を言っているのか理解するためには、乳児はまず、人の声を単語に区切っていくことから始めなければならないのだ。
単語は大抵、複数の音の組み合わせでできている。そのときの音とは何か。
「音素」という単位である。もう少し詳しく言うと、音素とはある言語で単語を作る音の単位で、「その音の違いが、違う単語を作り出すかどうか」がその言語の音素を決める。

「無駄なものを見つけて捨てる」
どの言語を母語としていても、生後6~8ヶ月までは、音素を音の物理的な違いに従って区別している。しかし、その後数ヶ月の間に、それぞれの母語に特有の音素の区別の仕方を身につけたために、その母語では必要のない識別能力を失うようになる。言い換えれば、無駄なことに注意を払わなくなるのである。つまり、学習とは単に細かい区別がどんどんできるようになる事だけではない。無駄なことを捨てることも大事なのだ。

なぜ捨てるのか。私たちはある状況で何かを判断したり、問題を解決しようとするとき、外界には情報は無限にある。しかし私たちは無限に情報があるとは思わない。無意識のうちに無限の情報(外界に存在するモノや出来事、音など)の中から取捨選択を行い、いま処理するべき情報だけを自分の中に取り込んでいるからである。

一歳児の乳児が、自分の母語で区別する必要のない音素の区別に注意をむけなくなるという事は母語の学習を効率的に行い、母語に熟達していく上でいたって合理的なプロセスなのである。
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(1)の記事も含めて子ども、特に赤ん坊は皆天才と言われる所以がここにある。
つまり、その所以とはテキストも参考書もない中で自力で学ぶ力であり、無駄なものを見つけて捨てる能力の事である。
そして教えてもらわなくてもどんどん自ら吸収していく力の事でもある。それらは生きていく上で必要不可欠で既に胎児の時から学びの原型は始まっている。

 

 

 

 


田野健