「夢のクリスマスケーキ」で想像力と探究心を爆発させる~新しい教育と企業のコラボレーションデザイン

未だ教科書通りの授業をしている学校が大多数だと思うが、2020年改革に向けてもっと生徒の主体性を喚起するようなカリキュラムのアイデアなどが盛んに行われてほしいものだ。

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21世紀型や探究型という言葉が教育業界でも日常的に聞かれるようになってきた。しかし、具体的な授業への導入についてはうまくいっていないという学校現場も多い。
筆者は、20年に亘り探究型授業の実践を行っているが、同じ現場だけで探究型の授業を構築することには構造的に難しさがある。人の出入りや、場自体を変えることで、柔軟で多様な学びに近づくことができる。
教育業界の人間だけが教育に関わっているという閉鎖的な現状を変えていくことが近未来の学びを作っていくのではないか。

そのために、教育業界と直接関係のない企業と教育のコラボレーションによる相乗効果を生み出すべく活動を進めているのだが、その中で今年、実際に教育現場との連携がうまくいったケースを紹介したい。

●「夢のクリスマスケーキ」が想像力を育む

描いたイラストが本物になる『銀座コージーコーナーの夢のクリスマスケーキコンテスト』が開催され、グランプリが発表された。この企画は小学生以下を対象にケーキのアイデアをイラストで募集して、優秀作品をパティシエが本物のケーキとして実現するというもので、今年で10回目の開催となる。

いわゆる「アクティブ・ラーニング」という言葉が使われ出して以降、ブレスト的なアイデア出しや議論は行われるようになってきたが、それらが具体的な成果物となることは少ない。実現するかも知れないというワクワクがあるのとないのとでは、関わる生徒たちのモチベーションはまったく変わってしまう。
そこで、この企画を授業に活用できないかと考え、実践させて頂いた。

●「夢のクリスマスケーキ」を探究する授業

筆者が実際に授業を実施したのは、大阪にある香里ヌヴェール学院小学校である。
45分の授業の中で、前半の15分間はレゴを使用して「想像力」をテーマにしたワークショップを行い、後半の30分でクリスマスケーキのアイデアを出してもらった。
後半の手順としては、最初に自由に「クリスマスケーキ」を考えてもらったあとで、企画立案における「新しい」「実現できる」「面白い」「役に立つ」「安心できる」の5つの視点を説明し、自分のアイデアをチェックし、さらにグループでお互いの視点を確認した。
中には「空飛ぶソリ」などの小学生らしいアイデアもあったが、「ドローンを使えば可能なのではないか」「危ないんじゃないか」「面白いけれど役に立つかな」などの議論に展開するものもあり、最終的に「誰が喜ぶのか」という発想に結びつくチームが多かったのが印象的だった。

このように描いた作品について意見をシェアすることは「他者の意見を聞く」ことや「共感」を学ぶ上で効果的である。
コンテスト形式であるため、どのようなアイデアやデザインが共感されるかを想像し、アイデアを選択する力を育成することが狙いだ。
発表と意見シェアのあとはもう一度自分の作品を修正・改良して、イラストや説明文を完成させる。時間の関係で色塗りまで到達しなかった生徒もいたが、休み時間にも前のめりに続けている姿を見て、先生達も「あの子があんなに真剣になっているのを初めて見ました」という一幕もあった。

●これからの教育と企業
例えばカリキュラムを作る際に、「何を使って何を学ぶのか」ということに永らくの間焦点が当たることはなかった。テストに出題されるから、ということが最大でかつ唯一の理由として君臨していた。
しかし、文科省を中心に「生きる力」を育むことが急務であるという発想から、2020年に向けて教育改革が進んでいる。
探究心を育て、主体的・対話的に学ぶ力を身につけることが目的になるのであれば、その素材が既存の教科やコンテンツである必要はない。
日本の教育において、リベラルアーツという言葉を聞くことはあまりないが、今こそ学びの本質を取り戻すチャンスなのだと感じる。
その中で、形ばかりのCSRではなく、企業の強みを活かして、子どもと学び合うような場づくりに希望を感じる。そういう企画が増えていくことを期待したい。

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