中学受験「多様化」の実態とワケ…英検準1級並み、プログラミング、AIについてプレゼン

社会で求められる能力をもった子供を増やすために、入試で入社試験のような課題が増えている。

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■まるで入社試験のような新タイプ入試が続々登場

もうひとつのトレンドが、これまでにない形態の入試を実施する学校が増えていることだ。新タイプ(適性検査型)入試と呼ばれるが、その実施校は、2014年38校→2018年147校、延べ受験者数も1989人から1万3000人に増加している。

 もともとは公立中高一貫校受験生の受け皿として始まった入試で、公立中高一貫校で実施されている適性検査に準じた問題が出題されてきた。適性検査の出題のポイントは大きく2つ。1つ目は、「いかに覚えたか」ではなく、「いかにその場で考えられるか」という思考力・判断力を問うこと。

 2つ目は、「自分なりの提案や意見」をその場で表現できるかということ。公立中高一貫校ができた当初、従来の私立中学受験とは対策が異なるために私立中学との併願は難しいとされてきたが、ここ数年新タイプ入試を実施する学校が増加したことで公立中高一貫校との併願が可能になり、私立中学受験に新たな層を生み出している。

 興味深いのは入試の多様化だ。名称も総合型・論述型・自己アピール型・思考力型・AL(アクティブラーニングの略)型などさまざまだが、中にはレゴブロックを使って考える入試、ワークショップ型の入試、プログラミング入試など、これまでの入試のイメージを覆すユニークなものがでてきた。

 レゴブロックを使った入試でマスコミでも話題になっているのは、聖学院中学校(東京都北区)。2019年入試ではものづくり思考力入試・難関思考力入試・M型思考力入試の3つが行われたが、そのうち2つがレゴを使う入試。この入試を開発した教員は、企業の組織開発や研修用に開発されたレゴ®シリアスプレイ®というメソッドの認定ファシリテーターの資格保持者。

■御三家レベルの課題に挑戦する子どもたち。新タイプ入試は、学力の定義を変える可能性大

それにしても、学校にとってはかなり手間のかかるこのような入試を行う理由はなんなのか。その背景には、前述の公立中高一貫校受験生を取り込みたいという意図もあるだろうが、2020年度から実施される大学入試改革に始まる教育改革の影響も大きい。実社会では、明確な答えのない課題に対して、分析し最適解を導き出し、チームになって解決する力が求められる。そのときに必要になるのが、新学習指導要領でも謳われている、思考力・判断力・表現力だからだ。

 一部の私学では国の教育改革に先駆けて、数年前からそうした能力の育成を重視したプログラムを学内で実施し、入試にも反映し始めている。その結果、出題された問題に対する正解を導き出す力が測られる従来の教科テストでは見えない、別の能力があるということが実証され始めているようだ。

 聖学院の思考力入試で課される問題のレベルは、御三家といわれる超難関校と引けを取らないが、この学校の入試偏差値は47(首都圏模試調べ)。偏差値だけを見ると、「なぜこんな難題を出すのか」という疑問も湧いてくる……。しかし、思考力入試を取り仕切る教員は、「頭のなかにある考えをなかなか言葉に落とし込めない子どもも、手を動かしブロックを使って表現するというプロセスを踏むことで、スムーズに言語化できる」と言う。

 実は、この入試で高得点を取って合格した生徒は同校の上位クラスに所属しているが、一般入試ではこのクラスには届かなかった。しかし、入学後は他の生徒に引けを取っていないという。通常の教科中心のテストでは引き出せない能力が、新タイプ入試なら引き出せるということなのかもしれない。

 また、できるだけ多様な資質を持った生徒を取りたいという狙いもあるだろう。実際、前述の2校では、新タイプ入試で入学した生徒は意欲が高く、一般入試で入った生徒と交ざることで授業にも活気が生まれるという。東大や京大が推薦入試を始めたのも同じ狙いだ。

 ここまで書いて、改めて「学力とは何か」「従来のテストで測られている能力は、ごく一面に過ぎなのではないか」という疑問が出てくる。これまで往々にして、受験を突破するためテストで点数をとれれば学力が高いと評価されてきた。しかし、実際にその枠内には収まらないが、思考力という物差しで測ったときに高いポテンシャルを持つ子どもがいる。新タイプ入試を実施する学校では、そんな潜在能力を持った子どもを見いだし、学内で育てていこうという意図が感じられる。

 

 

 

真鍋一郎