現役教育大生が日本の教育改革に奔走!2

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■オランダから持ち帰った2つの教育改革キーワード
そうした日本教育とはまったく違った、オランダ教育の特徴を長澤さんは次のように説明する。

「オランダの義務教育は、5~18歳までで、入学試験はありません。さらに、テーマ重視の教育や芸術重視の教育、多重知性教育などスタイルは多種多様で、ほかにも、シュタイナー、イエナプラン、オランダで試験的に始まった、iPadを用いたスティーブ・ジョブス・スクール(SJS)、モンテッソーリ教育、ドルトン・プラン、キリスト、イスラム教系などたくさんの選択肢があります。オランダは、子どもたちを200人以上集めることができたら、自由に学校を設立できるシステムがあるのです」(長澤さん)

その中から、彼らがもっとも感銘を受けたオランダの教育プランが、異年齢集団で学ぶ「イエナプラン」。それから、人間には8つの知能が備わっているという考えをベースにした、「多重知性教育」だという。この「イエナプラン」と「多重知性教育」には、子ども自身に考えさせて、自己肯定感を与える「コーチング」が基盤にあると説明する長澤さん。

コーチングによって、子どもたちの思考を引き出すことで、自己決定する場が必然的に増えます。それを繰り返すことで、子どもたちの自己肯定感を高めていきます。教師のあり方についても、オランダでは、“ティーチャー”だけでなく、“コーチ”の役割も重要である点が、日本とは異なります」(長澤さん)

■日本で取り入れたいオランダの授業(1)個に合わせた教育
「オランダの小学校の教室に入ってまず目に止まったのが、授業中に後方のロフトにいる子どもたちでした。聞けば、この子たちは知能が高いから、自分たちでどんどん勉強を進めていくタイプとのこと。つまり、日本の学校のように、“みんな一緒に勉強しましょう”というスタンスではなく、できる子どもはどんどん学習を進めてOKなのです」(長澤さん)

「日本のようにみんなが同じ黒板を見るわけではなく、パソコンに向かって背中を向けている子どももいるなど、学び方は自由。ある女の子は、アスペルガー症候群ではよくある聴覚過敏により、周りの音が気になってしまうので、授業中にヘッドフォンをしていました。このように、個々に合わせた配慮がしっかりされているのも特徴です。一番驚いたのは、日本のように国語の時間はみんなで国語の勉強をするわけではないということ。子どもそれぞれが、今日やるべきこと、学ぶことを自分で決めているので、国語をやっている子もいれば、算数をやっている子もいます。その横では、絵を描いている子もいました」(長澤さん)

最終的に1週間の勉強がうまく進んだかどうか、先生と相談する時間も設けられると、長澤さんは説明する。進まなかった場合、教師はそれを否定するのではなく、できなかった理由を子どもに考えさせる。その上で『来週はどうすればいいと思う?』というふうに、原因をしっかりと子どもに見つけさせて、次にどう改善すればいいかを促すのだという。

■日本で取り入れたいオランダの授業(2)解のない問いで考える力を引き出す
越智さん、長澤さんが視察した学校のひとつ、ユトレヒト州の中高一貫校「Gerriit Rietveld College」では、応用化学を利用した「テクナジウム」という新しい教育を取り入れた学校として知られている。ここでの授業の構成は大きく2つに分かれていて、午前は解のある教科指導、午後からは“解のない問い”の授業「コーチング」が実施されているという。

コーチングの授業では、たとえば、『ユトレヒトスキポール空港の間で列車が増え、騒音が問題となっている。解決策を考えよ』『一人暮らしをする人が増えている。よりエコな一人暮らしのマンションを考えよ』などの課題が一例としてありました。現実に起こっている社会課題や企業が取り上げるテーマを学生にも考えさせるのが特徴です。柔軟な発想力のある子どもたちにアイデアを出してもらうことで、社会や企業にとってもメリットがあると、現場の先生は話していました。一方で、小学校のコーチングの授業では、『人はなぜ旅をするのか?』という深い洞察力が必要な問いが出されていました」(長澤さん)

“解のない問い”の授業は、考えるだけでは終わらず、自分の考えをみんなの前でプレゼンし、解決策を見出すという。また、優秀な解を発表できたチームは学校で表彰され、それを企業にフィードバックしているとのこと。

「たとえば、列車の騒音問題の解決策を考えた時に、子どもたちの間で『線路にゴムを貼ろう』というアイデアが出ました。学校には3Dプリンタが設置されているので、それで実際にゴムテープを作ってみて、耐久性があるかどうかなどをチェックします。考えて終わりなのではなく、目で見てふれて感じられるような実証的な授業も取り入れられていました」(長澤さん)

 

 

 

柴田英明