学びが止まった国と継続できた国の致命的な差

ICTがもたらす教育現場の劇的な変化リンク

学びが止まった国と、継続できた国。2つを分けたカギは、EdTech(エドテック)にあった。Education(教育)のEdとTechnology(技術)のTechを組み合わせた造語が、世界の教育現場に浸透している。EdTechの本質とは何か、先進導入国から学ぶことは何か。日本におけるEdTech分野の第一人者として知られるデジタルハリウッド大学大学院の佐藤昌宏教授にインタビューを行った。

■教育を科学する、多彩なチャレンジ
いみじくも、新型コロナウイルス感染症の拡大によってEdTechの差が浮き彫りになったことも事実だ。

「お隣の中国では子どもたちの学びは止まりませんでした。確かに学校での教育は中断されましたが、自宅で学習する“学び”が継続されたのです。それは中国がEdTech先進国だからにほかなりません。今や、EdTechにおいて中国はアメリカを抜いて世界トップの地位にあります。韓国でも小中学生の学びは止まりませんでした。しかも、生徒など感染者が発生した場合のプランBを用意しており、国策としてリアルとオンラインのハイブリッドの仕組みを構築しています。イギリスでは21年3月まですべての講義をオンラインで実施すると決断した大学があります。リアル講義の代替、劣化版ではなく、オンラインならではのすばらしい教育を提供すると掲げ、だからこそ学費返還の求めには応じないと宣言しているのです」

もはやEdTechを疑問視する時代ではなく、現実を直視する必要があるだろう。すでに世界の国々では当然のようにICTが教育分野のインフラとして機能している。

「重要なことは、EdTechに対する姿勢はその国が人材育成を国家戦略と考えているか否かにかかっているのです。資源がなく国土が小さな国が大国に伍していくためには優秀な人材を育成するしかありません。つまり、EdTechを積極的に導入している国々はすべて人材育成を国家戦略として位置づけているのです」

■「主語を変える」とは
では、日本でEdTechを導入することによって、何を変えていかなくてはならないのか。
 「象徴的に言えることは、“教育”から“学び”に変えていく。主語を変えるのです」。どういうことか。「教育の主語は教える側、つまり、先生や親になりますが、EdTechによって児童生徒が主語となる“学び”の世界に変わるということです。これまで、教員とは教えを請うという関係でしたが、今はインターネットにつながったパソコンが1台あれば、自分の知的欲求を徹底的に満たすことができます。コストもリーズナブルになり、時間や空間の制約を超えて、各自の学習スタイルで学べるようになりました。これまでの教育が一斉授業の教室型なら、今は1人ひとりの学習ペースに合わせて、丁寧に寄り添うこともできる。つまり、学びを個別最適化することにもつながるでしょう」

■これからの教職員の役割についてコメント
「今、何が起こっているのかを知ってほしいと思います。世界の教育イノベーションの動き、ICTの可能性、そして子どもたちの動きです。確かに、専門家の議論と現場との間にギャップがあることも事実でしょう。しかし、GIGAスクール構想で日本の教育現場は大きく変わっていきます。義務教育の児童生徒1人1台を与えることによって世界トップクラスの環境が手に入るのです。それだけ大きな可能性があるということです。ただ誤解してほしくないのは、ICTの活用は、あくまでも手段にすぎないことです。目的は、自ら積極的に学びに向かう子どもたちを育てるためにある。ですから、これから教育は知識を注入するのではなく、子どもたちが自らの学びを構築していくことを支援する役割になってほしいと期待しています」