大学は「オンライン化」で根本的に変わっていく

コンサルタントが予測する大学の未来予想図リンク

■「親が学生だった頃の常識」は通じない
オンラインで講義はどこまでできるのか。ここでは、「大学の未来予想図」をテーマに掲げ、日本の大学関係者のみならず、これから我が子の進路や志望先に頭を悩ませる保護者の方々へ向けて、今後大学で進んでいくと思われる「教育改革」や「入試改革」について紹介していきたい。

「あらゆる社会活動が自宅中心」という制約を余儀なくされる中で始まった今年の大学の授業は、すでに後期の授業に突入している。実態はどうなのだろうか。そもそも大学の授業は「講義」形式と「実習・実験」形式に分類できる。このうち講義にはリアルの教室(オフライン)でなければならない理由がそもそも少なく、オンライン化は比較的容易だ。

VRを使えば実習のオンライン化も可能
急なオンライン対応のため、不満も聞こえてくるものの、「通学の負担から解放された」と、学業に集中できる環境が実現したと歓迎する声や、非対面であるがゆえのメリットとして「自分の考えを発言しやすい」といった意見も学生から挙がっている。

一方で、主に理系学部で行われている実験や、政治経済学部ケーススタディ、社会系学部にあるフィールドワーク、芸術系学部における制作やレッスンなどの実習では、オンライン化しようにも「リアルの場」を前提として授業が設計されている場面が目立つ。
「学びのプロセス」を実現できれば、リアルの場は必要条件ではなくなる。現代の先端デジタル技術を使えば、実習や実験で求められる環境をシミュレーションで構築することができ、リアルの授業を代替できるほど高い精度を確保することができる。技術的には、実習の大半をオンライン化することができるのだ。

オンラインを前提とした教育の議論をさらに深めていくと、長い歴史の中で積み上げたてきたこれまでの教育手法の見直しや取捨選択に迫られる。そして、「どのような人材を輩出したいのか」「そのためにどのような教育をどのような手法で提供するのか」という根源的な疑問にぶつかることになる。

大学は研究機関としての側面がある一方で、在籍する学生を卒業させ、就職させるという「教育機関」としての側面も存在する。教育機関としての役割を考えれば、オンライン教育を進めると同時に「From(どのような人材を迎え入れたいのかという入口=入試の定義)」と「To(どのような人材を輩出したいのかという出口=ターゲットとする人材マーケットの定義)」の2つの点で、自学の「教育機関」としての在り方の再定義が求められているのではないだろうか。

■オンライン化は教育改革、入試改革に連動
オンライン講義の整備や制度化は単なるツールの話ではなく、各大学の未来をどう描くのかという「教育改革」と同根のテーマなのである。

ここまで授業のオンライン化について考察してきたが、教育機関にはもう1つの重要な要素がある。すなわち「入試」だ。なぜ入学試験は、キャンパス内で監督官の監視のもと、1つの空間に集合して集団で実施しなければならないのだろうか。それは現在の「学力判定」を行うマークシート式試験方式がカンニングなどの不正行為に対して“弱い”からである。

そもそも試験は選抜のためのものである。では、どのような基準で受験生を選抜するのか。先述した「From(入り口)」にふさわしい学生かどうかが、その判定の基準である。昨今の資格試験の多くがオンラインに移行しているように、性善説に立つならば入試もオンライン化は可能である。とはいえ、入学の公平性という観点から、不正防止の難易度は格段に上がる。

■「どんな学生を育てたいか」が重要になる
各大学はいま、戦略的に教育の「実」を変えなければならない。それはいわば、大学ごとに異なるであろう「人材を輩出したいマーケットの定義」「そのマーケットのポスト・コロナ時代のありよう」「マーケットからの人材育成(教育)に対する要請」といった“問い”に、今まで以上にクリアに答えられることが求められているのである。

保護者にとっては「我が子がどのような人材に成長するのか」を具体的にイメージできるかどうかは、上記の“問い”にその大学がどのように答えているか次第。この問いへの回答が明瞭である大学は、ポスト・コロナ時代において競争力のある強い大学だと言える。これらの情報は保護者にとって、我が子を入れたい大学が、どれだけ教育改革を“自分ゴト”として取り組んでいるかを判断する材料となるだろう。