学校で「発達障害」の子どもが急増する本当の理由


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日本で子どもの人口が減少する中、「発達障害」と呼ばれる子どもは増え続けている。2006年に発達障害の児童数は7000人余りだったが、2019年には7万人を超えた。それに伴い、子どもへの向精神薬の処方も増加している。
発達障害とされる児童数はなぜここまで増えているのか。そして、発達障害の早期発見、投薬は子どもたちを救っているのだろうか。特集「発達障害は学校から生まれる」の第6回は「学校で『発達障害』の子どもが急増する本当の理由」。
第5回 発達障害児「学級に2人」、衝撃結果が広げた大波紋
「あの子は空気が読めない」「アスペルガーだから」――。

そんな会話が聞かれるほど、今では身近となった発達障害発達障害の存在を世の中に浸透させたのが、2002年に初めて行われた文部科学省の調査だ。発達障害の可能性のある子どもが6.3%いるという調査結果が、発達障害の認知度を上げるきっかけとなった。

しかし、教師が児童を点数評価する調査の実施には一部の教員や保護者の強い反発を招いた(詳細は連載第5回「発達障害児『学級に2人』、衝撃結果が広げた大波紋」)。なぜ調査は行われることになったのか。

溝にいる子どもへの支援が求められた
文科省調査の調査研究会メンバーの上野一彦氏(東京学芸大学名誉教授)は、「“障害”と“健常”と呼ばれる子どもの中間に、発達障害の子どもがいる。その溝にいる子どもへの支援を連続的に行うべきだという意見があった」と振り返る。

こうした発達障害の児童を支援の対象にするには、通常の学級にどれくらい発達障害の子どもがいるのか、実態を明らかにする必要があった。その背景には、研究者からの提言や親からの陳情もあった。

上野氏は発達障害の1つである学習障害の第一人者で、アメリカへの留学経験から日本の学習障害児への支援が大幅に遅れていることを訴えていた。

学習障害は当時、「通級指導」(通常学級の児童に個別指導を行うこと)の対象になっていなかった。上野氏の働きかけにより、1990年に学習障害(LD)の子どもを持つ親の会「全国LD親の会」が設立され、学習障害への支援を求める親の会の請願運動が活発化した。

ついに2001年、文科省は動いた。「21世紀の特殊教育の在り方に関する調査研究協力者会議」の最終報告で、「通常の学級の特別な教育的支援を必要とする児童生徒に積極的に対応することが必要」とし、発達障害の全国的な調査を行うことを提言した。

こうして2002年、「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査」によって初めて発達障害の実態調査が行われ、その支援の必要性が示された。調査から2年後、2004年に発達障害の早期発見と支援を促す「発達障害者支援法」が成立。2006年には発達障害は通級指導の対象となった。「調査が政策の骨になった」と、上野氏は調査の意義を強調する。

しかし調査から20年経った現在、発達障害とされる子どもは急激に増加した。調査は教師が児童の言動を評価するものだったが、その調査結果がクラスでの在籍率や有病率を示すように、学校現場に広がっていったことが一因だ(詳細は連載第5回記事)。

教員の子どもを見る目が変わった
障害のある子どもの就学や学校での悩みについて相談を受ける「障害児を普通学校へ~全国連絡会」の片桐健司教諭は、2000年代初頭を振り返り、「この頃、発達障害の相談が増えた」と語る。

発達障害が話題になって、教員の子どもを見る目が変わり始めた。『手がかかる』で済んでいた子どもが、何かあるとすぐ発達障害と思われるようになった。発達障害で教育相談や医者に行きなさいと言われたと、泣きながら相談に来る親がいた。医者に相談すると何かしらの診断名がついてしまう」(片桐教諭)

特別支援教育に詳しい一部の専門家は、発達障害を早期発見した場合でも、「通常の学級での指導や支援が工夫されないまま、安易に特別支援学級への転籍が検討されるケースがある」と指摘している。

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(大川剛史)